ART & DESIGN

ART & DESIGN

京都が舞台の国際的な写真祭「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2022」で注目!イタリア系セネガル人アーティストのマイムーナ・ゲレージ

京都を舞台にした、日本では数少ない国際的な写真祭「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2022」

京都を舞台にした、日本では数少ない国際的な写真祭「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2022」が、趣のある歴史的建造物や近現代建築といった京都ならではのロケーションにて、2022年5月8日まで開催中です。今回のテーマは「ONE」。KYOTOGRAPHIEの共同創設立者/共同代表のルシール・レイボーズ氏と仲西祐介氏は、このテーマに関して次のように述べています。


「『一即(すなわち)十』という言葉があります。一が単一性を、十は無限の数を現します。一つのもの(個)がそのものとして、他のすべて(全体)を自らに含みながら他と縁起の関係にある。このとき、この一つのものと他のすべてが同体の関係にある。こういう状態をイメージしてください。」

出典:KYOTOGRAPHIE


京都市から「京都市文化芸術有功賞」を授与される、KYOTOGRAPHIEの共同設立者/共同代表の仲西祐介とルシール・レイボーズ 
京都市から「京都市文化芸術有功賞」を授与される、KYOTOGRAPHIEの共同創設者/共同代表の仲西祐介氏とルシール・レイボーズ氏 

本年度、第10回目を迎える本フェスティバル。京都市は、文化芸術に関する活動を通じて、文化芸術に対する市民の関心を高め、その振興に寄与することに功績した一般社団法人KYOTOGRAPHIEに対して「京都市文化芸術有功賞」を授与するなど、ますます注目度の高まっている写真祭です。


10のメインプログラムと、3つのアソシエイテッドプログラム、合計22名のアーティストの作品が鑑賞可能ですが、中でも今回はイタリア系セネガル人アーティストのマイムーナ・ゲレージに注目したいと思います。


マイムーナ・ゲレージは、イタリアの敬虔なクリスチャンの家系に生まれたアーティスト。セネガルで過ごしたのち、スーフィー系のイスラム教に改宗したゲレージは、写真、彫刻、ビデオ、インスタレーションなど多角的に活動を行っています。彼女の作品は、人間の精神性と内なる神秘的な次元との関係についての深い視点を表現。アフリカ、アジア、ヨーロッパの文化の根源や融合に対する是認が見受けられ、芸術と人生におけるグローバリゼーションを受け入れる彼女の姿勢が如実に反映されています。文化・社会・言語・民族・宗教にまつわるバリア(障壁)を超越することを目指しているといいます。


嶋臺ギャラリーの外観
嶋臺ギャラリーの外観

本フェスティバルでのゲレージの写真作品は、1608年に生糸商として創業し、江戸時代の中頃、伊丹の酒造家との縁で、同地の酒も取り扱う酒問屋も兼業することになったことを起源とする「嶋臺(しまだい)ギャラリー」で鑑賞することができます。ギャラリー内は、ゲレージの作品に繰り返し登場する「ドア」からインスピレーションを受けて、シリーズごとに雰囲気の異なる4つの小空間で構成されています。


「嶋臺(しまだい)ギャラリー」で展示されるマイムーナ・ゲレージの作品

「嶋臺(しまだい)ギャラリー」で展示されるマイムーナ・ゲレージの作品

最初の空間は、7人の聖人がいる「青い部屋」で、こちらには初公開の作品が並んでいます。作品のモデルは後ろ姿だったり、顔を隠すなど、謙遜のような表現が見て取れます。来場者は、作品を通してスピリチュアルな雰囲気に浸ることができるでしょう。


「嶋臺(しまだい)ギャラリー」で展示されるマイムーナ・ゲレージの作品
「嶋臺(しまだい)ギャラリー」で展示されるマイムーナ・ゲレージの作品
「嶋臺(しまだい)ギャラリー」で展示されるマイムーナ・ゲレージの作品

最後の空間である「緑の部屋」では、自然を映し出すシリーズが展示されています。二人の女性が向き合って多数の木の枝を持っていたり、お互いに背を向けてはいますが、帽子から木の枝が伸びて繋がっているなどの作品です。ゲレージが本写真展のために用意した本プロジェクトのテーマとなっている、アラビア語で「霊」を意味する〈Rûh〉の、共同体と魂に関しての普遍的な真実を感じ取ることができます。本展では、「Rûh」が「ルーツ」という言葉と組み合わされており、鑑賞者を新たな意識の次元へと没入させていきます。


ゲレージは「本展は、女性のスピリチュアリティや外の世界と内なる存在への理解とその折り合い、人間と自然が相互に連結し依存していることを認識する必要性へと導く過程と考えています。私の作品で描かれる人物は、すべて地理的な境界や性別の垣根を超えた、強く根付いた再生的で神聖な自然に特徴づけられます。つまり、人間の進化したビジョンを伝える、個人的な方法によって特徴づけられています。皮肉的で非現実的な世の中の解釈を通し、プラスチックの過度の使用という問題に取り組むために、視覚的な参照を組み合わせた植物の要素を作品に取り入れました。


Rûh展は、さまざまなテーマ別の展示で構成されています。2枚合わせの写真、《Green Transition》と《Flow》の展示では、写真の中の人物が鏡合わせに向き合っており、手に持った枝や頭の上の黒い帽子に挿された枝で繋がっています。例えば《Branch Navel》の写真では、この連結が 臍帯(さいたい)を連想させる一本の枝で表現されています。ここでは 、自然が人間の心の中と外の世界との象徴的なエネルギーの通過媒体であると解釈され、人の内面的・社会的な進化を可能にすることを示しています。


また、私自身の出自をもとに、二重のアイデンティティと、一つの精神に統一されたある国への帰属意識のメタファーを表現するため、2つの国籍を持つことを示す 2冊のパスポートの写真を展示しています。これは 今回の第10回KYOTOGRAPHIEのために選ばれたテーマ 『ONE』とつながります」と語っています。


ぜひ、京都の美しい時期に開催されている本展に足を運んでみてはいかがでしょうか。


■KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2022

マイムーナ・ゲレージ 展示会場:嶋䑓 ギャラリー 

京都府京都市中京区御池通東洞院西北角

Tel. 075-221-5007

会期:2022年4月9日(土)-5月8日(日)

時間:10:00 -18:00(入場は閉館の30分前まで)

一般:800円
学生:600円(要学生証提示)

KYOTOGRAPHIE