みなさんは、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた絵画作品を実際にご覧になったことはありますか?日本で展示された作品としては、52年前の《モナ・リザ》が最後。それから長い時を経て、通称《美しきフェロニエール》が来日しています。たった15作品と言われるダ・ヴィンチの真作を間近で観られる、貴重なチャンスです!
ルネサンスが開花したイタリアの名作たち
“芸術の秋”にふさわしい展覧会が、現在、東京・六本木の国立新美術館で開催されています。世界最大級の規模を誇るルーヴル美術館のコレクションから選び抜かれた50点余りの作品を通して、15世紀から16世紀にかけてヨーロッパ各地で隆盛を極めたルネサンス美術の特徴を浮彫りにする『ルーヴル美術館展 ルネサンス』。
フランス・パリのルーヴル美術館の所蔵作品ですが、ルネサンスが生まれたイタリアの作品が数多く展示されています。

Photo © GrandPalaisRmn (musée du Louvre) / Gabriel De Carvalho / distributed by AMF-DNPartcom
なんといっても注目を集めているのはレオナルド・ダ・ヴィンチが描いた《美しきフェロ二エール》ですが、ボッティチェリの《5人の天使に囲まれる聖母子》、ティツィアーノの《フランソワ1世の肖像》、マルカントニオ・ライモンディがラファエロの原作に基づいて創作した《パリスの審判》など、イタリアの巨匠たちの作品も来日。
20代半ばのボッティチェリが描いた聖母は、1480年代に描かれた穏やかで慈愛に満ちた聖母とは異なり、凛とした力強いまなざしが印象的です。

Photo © GrandPalaisRmn (musée du Louvre) / Gabriel De Carvalho / distributed by AMF-DNPartcom

Photo © GrandPalaisRmn (musée du Louvre) / Philippe Fuzeau / distributed by AMF-DNPartco

Photo © Musée du Louvre, Dist. GrandPalaisRmn / Angèle Dequier / distributed by AMF-DNPartcom
また、イタリアの作品ではありませんが、筆者が好きなデューラーの《サイ》やクラーナハ(父)の《三美神》など、ルーブルが誇るコレクションも必見!
ルネサンスを象徴するレオナルド・ダ・ヴィンチから導き出した4つのテーマ「旅」「技法の革新と洗練」「古代へのまなざし」「肖像芸術の隆盛」を辿りながら、絵画から彫刻、版画、素描、工芸まで、多彩な作品を通じて、ルネサンス美術の真髄に迫る貴重な機会です。

Photo © GrandPalaisRmn (musée du Louvre) / Michel Urtado / distributed by AMF-DNPartcom

Photo © GrandPalaisRmn (musée du Louvre) / Mathieu Rabeau / distributed by AMF-DNPartcom
並んでも観る価値あり!ダ・ヴィンチの真作
筆者の経験上、名画と言われる作品は、何度も画集で見ていて「だいたいこんな感じでしょ」と思いながら会場に足を運んで肉眼で見ると、遠目からでも輝いてこちらに迫ってくるようなインパクトがあり、信じられないほど美しくて驚かされるものです。
そして、今回の《美しきフェロニエール》も例外ではなく、かなり離れた位置から観たときですら、ずっと私を待っていたかのような微笑みを浮かべているのでした。
平日の昼間、作品についての解説ムービーの部屋の後に行列ができていて、目の前で《美しきフェロ二エール》を観たい人はその列に並びます。作品の部屋に入るまで15分くらい、そこからさらに30分ほど列を進み、やっと作品の前に到達。普段、行列に並ぶのは大嫌いなのですが、やはり目の前で観られてよかったと納得しました。

© GrandPalaisRmn (musée du Louvre) / Michel Urtado
当時、北イタリアではまだ横顔の肖像形式が主流でしたが、レオナルドは四分の三正面観を取り入れました。さらに、頭部はほんのわずかに身体と逆方向に回転させ、女性がふと顔をこちらに向け始めたかのような生命力を与えています。
芸術家であり医学者であり、科学者でもあったレオナルド・ダ・ヴィンチの真作とされる絵画作品は、わずか15〜20点。あのフェルメールより少ない点数だったとは意外です。ほとんどの絵画は美術好きならすべて知っている作品ばかり。その恐るべきクオリティは、ひとつの作品に何年もの月日を費やし、磨き上げていったからに他なりません。実際、この《美しきフェロニエール》も、7年の歳月を重ねて仕上げています。

ジャン・クリストフォロ・ロマーノ、本名ジャン・クリストフォロ・ガンティ《ベアトリーチェ・デステ》1490 ‒1491年頃 パリ、ルーヴル美術館
Photo © GrandPalaisRmn (musée du Louvre) / Stéphane Maréchalle / distributed by AMF-DNPartcom
額の中央に一粒の宝石をあしらった飾り紐は、15世紀末のイタリアでは「レンツァ」と呼ばれていましたが、いつのまにかすたれたファッションアイテム。しかし、レオナルドの作品が19世紀初めに「美しきフェロニエール」と誤って称され、有名になるにつれて、このアクセサリーがフランスの女性たちの間でリバイバルし、1830年代には「フェロニエール」と呼ばれるようになったという逸話も。
レオナルドの絵画は、今でいうモード誌のように、ファッションリーダー的な一面もあったようです。
もう1枚の《美しきフェロ二エール》
「美しきフェロニエール」はフランス国王フランソワ1世(在位1515 –1547 年)の愛妾で、王の死の要因になったと伝えられる人物なのですが、現在では架空の人物と考えられている女性。
フランス王家のコレクションのなかで、17-18世紀を通じて「美しきフェロニエール」と呼ばれていたのは、当時はレオナルドの作品とみなされていた横顔の女性肖像画でした。その後、19世紀初頭に呼び名が混同されたことをきっかけに、次第にレオナルドの作品が《美しきフェロニエール》と通称されるようになったそうです。

Photo © GrandPalaisRmn (musée du Louvre) / Franck Raux / distributed by AMF-DNPartcom
ルネサンスの時代には、一人ひとりの人間が持つ能力や個性への関心が高まり、こうした流れの中で、美術の中で大きく華開いた分野が肖像でした。
今回の展覧会でも、後に不仲になる彫刻家バッチョ・バンディネッリがミケランジェロを描いた肖像など、興味深い作品が展示されていました。

Photo © GrandPalaisRmn (musée du Louvre) / Stéphane Maréchalle / distributed by AMF-DNPartcom
吹く風が心地よくなり、色づく街を散策したり、ゆっくり美術鑑賞したくなる秋。レオナルド・ダ・ヴィンチの傑作をはじめ、時を超えてルネサンスの美術に触れてみませんか。
ルーヴル美術館展 ルネサンス
会期:2026年12月13日(日)まで
会場:国立新美術館 企画展示室1E
10:00-18:00(毎週金・土曜日は20:00まで)
※入館は閉館30分前まで
休館日:毎週月火曜日 ※11月3日(火・祝)、12月8日(火)は開館
観覧料:一般2,400円、大学生1,400円、高校生00円
※中学生以下および障害者手帳をお持ちの方(付き添いの方1名含む)は無料
※12/7(月)〜13日(日)は日時指定制を導入するため、日時指定券の購入が必要です。
公式サイト
https://www.nact.jp/exhibition_special/2026/louvre2026/