東京を拠点に、建築、インテリア、家具、プロダクトまで領域を横断して活動する「rararà studioラララ・スタジオ」。メンバーは、イタリア・トレヴィーゾ出身のリカルド・ダニエルさん、東京とミラノで育った上野きあらさん、イギリスで育ちイタリアにルーツを持つアダム・エスポージトさんの3人です。多様なルーツを持つ彼らが生み出す「イタリアと日本をつなぐ」デザインとは?
Instagramから始まった3人の関係
意外にも、出会いのきっかけはイタリアではなく、日本でのInstagramでした。
「共通の友人がリカルドさんのデザインした椅子をストーリーに載せていたんです。それを見て、『イタリア人で、日本のメーカーと仕事をしている人がいる。面白いな』と思ってフォローしました」ときあらさん。
そこから「一緒にコーヒーを飲みませんか」と会うことになり、話してみると目指していることがよく似ていることに気づき、rararà studio設立にいたりました。


リカルドさんとアダムさんも、同じ建築・デザインの世界にいながら、最初の1年ほどは「ピッツァやサッカー、ジェラートの話ばかり」。しかし、次第に互いの仕事を知り、アダムさんが手がけるオフィスにリカルドさんの家具を採用するなど、仕事でもつながっていき、現在は3人でrararà studioとして活動しています。


建築から家具まで、境界をつくらない
rararà studioでは、インテリアだけでなく家具やプロダクトなど、さまざまなスケールのデザインを手がけています。
「昔のイタリアでは、いまのようにデザイナーという仕事が細かく分かれていませんでした。建築家が空間をつくり、その中の家具をデザインして、ロゴまでつくる。私たちも、そういう昔のイタリアの建築家の仕事の仕方を目指しています」と語るリカルドさん。
デジタルの時代ですが、彼らの仕事場には大きな紙のロールや黒板があります。スケッチを描きながら3人で話し合い、プロジェクトをつくり上げていきます。


「私たちは、ものすごくアナログなんです」。
デジタルに頼らず、自ら手を動かしてアイデアを具現化し、ディスカッションを重ねていく。この姿勢は、rararà studioのものづくりに現れています。
日本の畳をイタリアへ。『PAJA Collection』
2026年のミラノデザインウィークで発表したのが、福島県の久保木畳店、佐賀県の平田椅子製作所と共同開発した『PAJA Collection』です。
座面に畳を使った椅子で、「PAJA」という名前はイタリア語の「藁」に由来しています。

「畳は1300年くらい日本で愛用されています。でも和室が減り、畳屋さんの仕事もどんどん減っています。日本の大切な歴史の一部を絶やさないために、違った形に変換できないかと考えました」
そこで畳を「床に敷くもの」から「座るもの」へ。さらにフラットパックにすることで、輸送時の環境負荷にも配慮しました。自分で組み立てる『PAJA』は、トンカチとして使ったパーツが一輪挿しに変身します。

また、フレームの素材には日本を代表する木材ヒノキを使用し、あえて過度な仕上げや塗装を施さず、使い続けると現れる経年変化を楽しむ仕様。時とともにゆっくり移ろう香りや色合いも、『PAJA』ならではの魅力です。
イタリアでとくに好評だったのが、畳とヒノキの香りです。
「日本人にとっては懐かしい香りですが、イタリア人にとっては新しい。“すごくリラックスする”と言ってくださる方が多かったですね」

日本では当たり前になっているものも、イタリアの視点で新しい価値が見えてきます。
「イタリアという目線から日本の伝統的なものを見ると、“これっていいじゃん”と改めて気づくことがあります」
ミラノで「午前」にデザインを語る
ミラノデザインウィークでは、彼ら自身が日本のメーカーを集め、『GOZEN 午前』という展示を企画しました。
「一般的には夕方にお酒を飲みながらプレゼンテーションしますが、私たちは真面目にコーヒーを飲みながら、午前中にデザインを語り合おうと考えました」

大勢を集めるのではなく、来場者を1組ずつ約30分かけて案内。椅子に座り、素材に触れ、香りまで体験してもらいました。
「いまはInstagramやPinterestで、たくさんのイメージを見ることができます。でも私たちは“Slow down”したかった。じっくり見て、知って、体感してもらいたかったんです」

日本で大切に守られてきた伝統を、デザインの力で世界を魅了するプロダクトへ。
「イタリアのデザイン力を日本とつなげて、日本の技と合わせる。イタリアに置いたら日本らしさを感じ、日本に置いたらイタリアらしさを感じる。どこに行っても2つの特徴が見えるようなモノや空間をつくりたいんです」
2つの文化の「間」をデザインする
rararà studioがつなぐのは、文化だけではありません。
福岡のソファメーカーと開発したアウトドア家具『WAO』は、フレームをアウトドア家具の技術に優れるイタリアで、クッションを日本で製造。一方、エスプレッソカップ『OCIO』は、新潟・燕の職人による「へら絞り」の技術を生かしています。

『OCIO』は北イタリアの方言で「気をつけて」という意味を持ちながら、日本語の「お猪口」にも響きを重ねています。とても軽量で冷めにくいチタンを素材に、指で持ちにくいエスプレッソカップの形を見直しつつ、飲み物本来の味と香りが楽しめるため、エスプレッソにも日本酒にも使える。まさに2つの文化が交差するプロダクトです。

「日本もイタリアも、食べ物や建築に深い文化があります。でも現代に生きている私たち自身が、それを忘れてしまっているところもある。デザインを通して掘り出して、いいものをもう一度思い出したいんです」
ただし、“イタリアンデザイン”というスタイルに自分たちを閉じ込めるつもりはありません。
「“イタリアンデザインだからこう”と決めてしまうと、それがリミットになります。私たちには決まったスタイルはありません」
日本とイタリア。どちらか一方に寄せるのではなく、その間にある可能性を見つけ、新しい形にする。
異なる文化や人、技をつなぎながら、rararà studioの「ラララ」は、これからも続いていきます。
rararà studio 公式サイト https://www.rarara.studio/