ART & DESIGN

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日本が誇る人間国宝の至宝の技と姿を体感できるホモ・ファベール・イベント開幕!

ヴェネチアの写真
©Courtesy of Fondazione Giorgio Cini

世界の優れた職人たちの存在を守り、ものづくりの知恵、作品の裏にある物語や地域性を丁寧に伝える、国際的な文化イベント「HOMO FABER EVENT(ホモ・ファベール・イベント)」。2022年に2回目となる「HOMO FABER EVENT 2022(ホモ・ファベール・イベント 2022)」が、4月10日から5月1日まで開催されます。ホモ・ファベールとは「作る人」の意味で「工作人」と訳されます。物を作る道具を製作することは、他の動物から区別される人間の本質的規定があるとの考えがもとになっています。


ホモ・ファベール・イベントは、ヴェネチアのサン・ジョルジョ・マッジョーレ島という、ジョルジョ・チーニ財団が所有する4000平方メートルもの広大な敷地で繰り広げられる、40カ国350名を超えるデザイナーと職人による展覧会です。今回は機能的な日用品から圧巻の装飾品まで、未来へと残していくべき工芸の役割を明らかにしていきます。


「HOMO FABER EVENT 2022(ホモ・ファベール・イベント 2022)」に参加するデザイナーと職人たち
Photo: Laila Pozzo ©Michelangelo Foundation

本展は、深澤直人、ミケーレ・デ・ルッキ、セバスチャン・ヘルクナー、ステファノ・ボエリなど、国際的に活躍するデザイナー、建築家、キュレーターらによる15のエキシビションを通じて、世界の名匠の技の数々を披露。また、消失の危機にある伝統技巧から現代的なものづくりの手法、多様な素材、専門知識を紹介します。


中でも、今回は日本古来の伝統工芸にフォーカス。深澤直人(デザイナー)、内田篤呉(とくご)(MOA美術館・箱根美術館 館長)のキュレーションによる「12 Stone Garden」と、川内倫子(りんこ)(写真家)による「The Ateliers of Wonders」が、日本の人間国宝12名の至宝の技と姿の魅力を紹介しています。早速、みていきましょう!


深澤直人、内田篤呉のキュレーションによる特別展示「12 Stone Garden」

さざなみ文盛籃「游心」 藤沼昇 ©MOA Museum of Art
さざなみ文盛籃「游心」 藤沼昇 ©MOA Museum of Art

ホモ・ファベール・イベント 2022で開催する15の展覧会のうちの一つで、日本の人間国宝12名の特別展「12 Stone Garden」。16世紀のパッラディー建築の大食堂を会場に、デザイナー深澤直人が展示設計を担当。本展の特別招聘国である日本が大切に守ってきた究極の伝統工芸技に迫る内容です。


紬織絵絣着物「翠影」 佐々木苑子 ©Japan Kôgei Association
紬織絵絣着物「翠影」 佐々木苑子 ©Japan Kôgei Association

広範囲にわたる日本の伝統工芸の分野から、深澤直人とともにMOA美術館・箱根美術館 館長である内田篤呉が、備前焼の伊勢崎淳や、西陣織の北村武資、蒔絵の室瀬和美など12名を選定。着物や漆塗のハープ、竹の花籠、陶磁器、木象嵌などを紹介します。作品の展示とともに、制作の過程やものづくりの裏側を垣間見る映像も上映されるので、こちらもお見逃しなく。


(左から)内田篤呉MOA美術館・箱根美術館 館長 デザイナー 深澤直人 Laila Pozzo ©Michelangelo Foundation
(左から)内田篤呉MOA美術館・箱根美術館 館長 デザイナー 深澤直人 Photo:Laila Pozzo  ©Michelangelo Foundation

深澤直人は、この空間を大胆に見せながらも、鑑賞者の体験と調和することを想定しています。空間とのコントラストを考えながら、12の展示台を配置し、ほのかな照明で演出。作品を印象的に見せるとともに、来場者に会場のスケール感も同時に堪能してもらいたいと考えています。来場者は間近で作品を観ながら技の精緻さを堪能するとともに、古来より受け継がれてきた知と技、そして誠実さがその中に息づいていることに気づくでしょう。


深澤直人は「名工の姿勢からは、単にものづくりに専念する気持ちだけでなく、受け継いだ歴史と伝統を未来につないでいこうとする責任感が感じられる」と語っています。


川内倫子が芸術的視点で捉えた、工房に立つ人間国宝の姿「The Ateliers of Wonders」

photo Rinko Kawauchi ©Michelangelo Foundation
大西勲の工房にて Photo:Rinko Kawauchi ©Michelangelo Foundation

数多くの賞を受賞している写真家の川内倫子の写真作品を展示する「The Ateliers of Wonders」では、日頃見ることができない日本の人間国宝たちの創作風景をつぶさに紹介していきます。国が制定する「重要無形文化財保持者」である陶芸、漆芸、染織などの名匠たちから繰り出される超絶技巧の数々。古来の伝統を大切に守り、責任を持って受け継ごうとする気持ちから高度な芸術表現が生まれ、また後世へと伝わっていく様子を感じ取ることができます。


Photo Rinko Kawauchi ©Michelangelo Foundation
伊勢崎淳の工房にて Photo: Rinko Kawauchi ©Michelangelo Foundation

芸術性に富み、知性の漂う川内倫子の写真は、12名の名匠たちの素材、技術、動き、知識を事細かに捉えています。日本が大切に守ってきた漆の上塗り、友禅の染め、紬織、磁器の絵付けといった豊かな文化、ものづくりの瞬間を押さえています。正確に塗られていく赤漆、素早く編み上げられる竹ひご、微細な金粉で施される装飾など、職人の手の動きの一つひとつが、豊かな文化継承の賜物であることを深く理解できるでしょう。写真作品は、ルネサンス様式のサイプレス回廊に展示され、人間国宝たちの工房の様子をじっくりと鑑賞できるまたとない機会となっています。


写真家 川内倫子
写真家 川内倫子 ©︎Michelangelo Foundation

川内倫子は「人間国宝の方々と直接会い、実際にお仕事されている様子を拝見できたのは、本当に光栄なことだと思っている」と述べています。


コロナ禍で、なかなか日本から本展を見に行くことが難しい状況ではありますが、お近くの方は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。いかに現代的工芸が、アートやデザインとつながっているかを感じ取ることができるでしょう。


HOMO FABER EVENT(ホモ・ファベール・イベント)

会期:2022年4月10日(日)~5月1日(日)

会場:ジョルジョ・チーニ財団(ヴェネチア、サン・ジョルジョ・マッジョーレ島)