イタリア人アーティスト、ジャンルカ・マルジェリの核心に迫る
初めて見るのに、どこか懐かしい形の作品たちを創るのは、東京を中心に活動するアーティスト、イタリア人のジャンルカ・マルジェリ。
現在、東京 神楽坂の『Cave – Ayumi Gallery』では、彼と日本人アーティスト アリナ・エンドウとの個展『Mery – Go – Round』を開催中。ITALIANITY編集部では、展覧会の初日に気鋭のイタリア人アーティストとのインタビューを行いました。
―――簡単に自己紹介とご出身について教えてください。
こんにちは、ジャンルカ・マルジェリです。
私は南イタリアで生まれて、子供のころにフィレンツェで移住してそこで育ちました。
―――ジャンルカさんの作品のテーマについて教えてください。
2004年から常に「都市」や「ユートピア」というテーマで作品を発表し続けています。今まで世界各地の街を渡り歩き、気に入った造形を作品の中に取り込んでいますね。
アラブ諸国のモスクのミナレット、ヨーロッパの古い町並み、東京の提灯など、すべて私の理想とする作品の糧となっていますね。
―――それでは次に、アーティストを志すきっかけはあったのでしょうか?
最初にアート作品を作りはじめたのは物心つく前からでした。子供のころは誰から習うわけでもなく、心の思うままに色々なものを作っていましたね。
フィレンツェとベネチアでアートの勉強を終えて、大規模なインスタレーションで世界的に評価を受けていたオラファー・エリアソンのスタジオで勤務しました。その後ドイツ・ベルリンに移り、そこで建築家のアイナール・ソルスティンのもとで建築や彫刻について学びました。
アートは学ぶものではなく、テクニックを習得するものだと考えます。
そして、自分の「直感」が制作課程における最初の工程であると信じています。
学生時代に初めて直感に従い作品を制作し、先生の理論的なサポートによりその意味を分析することができました。
勉強は作品制作の助けにはならず、直感だけが全てです。
―――ということは、あなたの最初のキャリアは絵画からスタートしたのですか。
はい。基盤となるアートに関する勉強は絵画クラスから始まり、絵画の技術を学ぶことで他の技術を容易に学ぶことができました。
現在は絵画でなくコラージュを作っておりますが、特に差はありません。
―――その頃のスタイルから、現在のオブジェを制作するスタイルに変わったのはなぜでしょうか?
私自身は変わったという印象はありません。方法は違えど、私の生み出す作品は、あくまでの自分の直感をカタチにするというスタイルがあります。
―――日本とイタリアの双方で活動されているそうですが、両国のアートはどのような違いがあると思いますか。
両国のアートは様々な面で違いがあると思います。
私は明確な違いを答えることはできませんが、現在の私の作品のテーマになっている「公園」について、両国の違いを感じますね。
私にとって日本の公園は、たくさんの活動が行われる不思議な場所です。ヨーロッパではこのような場所はないでしょう。
大人たちが働いてる間、公園は別の都市のようです。まるで宮崎駿の世界のような、子供達の都市へとなり、またお年寄りやスポーツマン、動物の都市にもなります。
このように公園の表情を変える様々な活動というのは、レジャーや楽しみの場所であり、私のショーのテーマでもあります。
―――普段の生活の中でどのように制作のモチベーションをあげていますか?
おそらく私の作品のインスピレーションの元となるのは日常生活だけでしょう。
文字を書くのは得意ではなかったのですが、絵を描くのはとても得意でしたので、少しずつクリエイティビティが自己表現の方法となりました。
―――今回の展示では日本人のアーティスト、アリナ・エンドウ氏との共同作品が展示されていますが、二人でどのように制作を行っているのですか?
今回の展示は私とアリナと行ったなかで、もっとも素晴らしい展示の一つだと考えています。
2011年からアリナとプロジェクトを行なっていますが、リサーチはインド旅行に始まり東京へとたどり着きました。
コラボレーションは常にお互いの考えを合成する方法であり、共同作業により奏でる絶妙なハーモニーを発表するのが展示です。
この作品を見た人は、私とアリナが作品のどの部分を作ったのか聞いてきますが、私と彼女の創作は不可分のものとして考えてもらいたいと考えています。
―――今後の活動を続けるなかで目標はありますか?
東京銀座のエルメスのショーウィンドウのディスプレイを手掛けたいですね。
―――最後に日本のみなさまに何かメッセージをお願いします。
ぜひお子様を連れて展示会へお越しください。
あなたの年齢は関係ありません。
大切なのはたとえ一瞬でも夢を見たいと思うことで、私はその環境を作りたいと思います。
―――本日はどうもありがとうございました。
子供の頃の純粋な気持ちを保ったままアート制作を続けるジャンルカ。
そのノスタルジックな作品を見ることで、私たちも子供の頃の素直な気持ちを取り戻せるかもしれない、注目の展覧会は4月21日まで開催中です。
ジャンルカ・マルジェリ / Gianluca Malgeri
1974年イタリア共和国カラブリア州生まれ、現在ベルリン・東京在住。近年の主な展示に、グループ展、2015年「Edge of Chaos」(Casa Donati、 ヴェニス)、2013年「The Naturalists」 ( Castelluccio di Pienza, curated by Peter Benson Miller、ピエンツァ) 2009年「ItAliens 」(Italian Embassy 、ベルリン)、個展に、2012年「God bless You」(GaleriArtist、イスタンブール)、2011年「INSH’ALLAH」(MAGAZZINO、ローマ)、「Pese et Vaingue」(GaleriArtist, イスタンブール)、2009年「Apollo e Daphne」(White Rabbit,ベルリン)、2007年「Wraped Time」(MAGAZZINO、ローマ)、など。
アリナ・エンドウ / Arina Endo
1983年兵庫県生まれ、東京在住。京都工芸繊維大学工芸学部造形工学科卒業後、フィレンツェの版画学校Il Bisonte、フィレンツェ美術アカデミーで学ぶ。
近年の展示に、2015年「Homo Ludens」(Magazzino d’Arte Moderna /ローマ)、「Tie a Knot」(MILA KUNSTGALERIE/ベルリン)。2014年「Artworld Open International Printmakers’Competition」(Artworld/アムステルダム)2017年「Tokyo Midtown Award 2017 ア-トコンペ」受賞。
会期:2019年3月23日(土)-4月21日(日)12時-19時
休館日:水・木曜日
住所:Cave – Ayumi Gallery (〒162-0805 東京都新宿区矢来町114)
(Photo by Kei Okano)