ART & DESIGN

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イタリアと日本のデザインって何が違うの?注目の若手インテリアデザイナーに聞いてみた

突然ですが皆さんは、イタリアの建築やインテリアデザイン・家具について、どういったイメージが浮かびますか?ミラノ大聖堂やピサの斜塔のような、重厚感のある古き良きデザインをイメージする方もいれば、先鋭的でスタイリッシュなモダンテイストを思い浮かべる方もいるでしょう。今回は、学生時代はイタリアで建築やインテリアデザインを学んできたインテリアデザイナー、大田昌司さんに、イタリアと日本のデザインの違いについて聞いてきました。

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大田昌司 インテリアデザイナー

1985年福岡県生まれ。高校卒業後にイタリアに渡り、ミラノのSCOULA POLITECNICA DI DESIGNに入学。2005年の卒業後はイタリア国内のデザイン事務所に勤め、2008年に帰国し、山本達雄デザインに入社。2014年に退社し、独立。2017年よりインテリアデザイナーの呉勝人氏とともに、デザインスタジオ「THE TRIANGLE.JP」を設立。「もてなし」「しつらい」「ふるまい」といった日本人の美意識に響くデザインを追求している。主な仕事に「川越氷川神社」や「綱島園 いっぷく茶房」など。

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川越氷川神社

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綱島園 いっぷく茶房

あがるイタリア編集部が向かったのは西麻布にある事務所。扉を開けた瞬間に目に留まったのは、なんと茶室。その重厚な雰囲気に少しばかり緊張しつつ、インタビューを始めました。

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「カッコイイ」だけのデザインは、評価されない

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–大田さん、本日はよろしくお願いします。いきなり本題に入る前にちょっとお聞きしたいのですが、なぜあちらに茶室があるのですか?

弊社代表の呉がお茶を嗜んでいて、彼がたてるお茶を、毎日、朝と昼に二人で飲んでいます。

–そういった習慣があるのですね。

一日の始まりと、午後の始まりに、茶室で静かにお茶をいただくことで、凛とした気分で仕事に臨めるんです。

–なるほど、なんだかあの茶室を見るだけで背筋がピンとなりますね。

ある種の緊張感を生み出すことで、弊社にお越しいただくお客様に向けて、背筋を正し、仕事に対して本気で向き合っているということを伝えられればと思っています。

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–ところで、こちらの茶室からもこれまで大田さんが手がけられてきたものからも、日本人らしい「和」の要素を強く感じられるのですが、そんな大田さんがなぜ、学生時代は日本ではなく、イタリアで勉強されたのですか?

昔から家具が好きだったのですが、「これは良いなあ」というものの多くがイタリア製だったんですよ。あとは、単に留学先の国としてイタリアが魅力的に見えたのもあります。みんな陽気で楽しそうだなとか思って(笑)。

–確かに皆さん明るそうなイメージですね(笑)。

正直、とてもミーハーな心で選びました(笑)。

–高校卒業後にミラノの建築やインテリアデザインの専門学校に行かれたとのことですが、高校時代も建築などの勉強をされていたのですか?

いえ、高校は普通科だったので、本格的に勉強し始めたのはイタリアに行ってからです。もちろんイタリア語も全く話せなかったので、授業を理解するのはとても苦労しました。

–さぞ大変だったでしょうね…。

はじめの方は、先生が何を言っているかわからなくても、とりあえず授業内容を全てノートに書き写しました。それで家に帰ってから意味を調べて、「ああ、先生はあの時こんなことを言ってたんだ」みたいな(笑)。

–大田さんが学んだカリキュラムはどのようなものだったのですか?

大きく分けると、例えば「色彩学」や「サイン学」みたいな座学と、実際にモノを作るコンセプトデザイン学の2種類がありました。

–1年次は座学で、2年次からは実際に作るという流れだったのですか?

いえ、1年のはじめから実製作もありましたよ。

–あ、そうなのですね!具体的にはどういったものを作ったのですか?

入学して最初に出された課題は、「紙を使って何かオブジェクトを作る」というものでした。私は直方体の小さな箱をいくつも作って、それをランダムに積み重ねて塔を作りました。

–先生は主にどういった点を評価するのですか?

出来上がったデザインそのものというよりも、なぜそのデザインにしたのかや、どういうコンセプトなのかといった、背景の部分を重視されました。あとは、その背景の部分をどう上手くプレゼンテーションするかもポイントでしたね。

–とても勝手なイメージですが、イタリアの方はセンスというか、理論よりも感覚的な部分を重視しそうだと思ったので、むしろ理論の部分を評価するのは意外ですね。

ええ、そうでしょう。どんなにカッコイイものを作っても、そこに理由がないと駄目なんです。なので、イタリア人はプレゼンテーションの時にものすごくたくさん喋るんですよ。そうした姿勢は、今の自分に強く反映されていると思いますね。

–学ばれたことの中で「これはいかにもイタリアらしい考え方」だと感じたことはありましたか?

色の使い方は日本とは結構違いますよね。日本ではパキッとしたイエローの家はほとんど見ないし、あったとしてもかなり浮いてしまいますが、イタリアの家はカラフルなのに、街に溶け込むんです。それはなぜかというと、イタリアでは一度建てた建築物を壊してはいけないという法律があるからだと私は思っています。家そのもののテイストや屋根の色など、守るものがあるので、例えビビットな色の家が並んでいても、街に溶け込むんです。

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–ああ、なるほど。

建築物を壊してはいけないというルールは、インテリアデザインやプロダクトデザインにも影響を与えていると感じます。ベースを変えられない分、中で遊ぶと言いますか、椅子一つとっても、とことんデコラティブなものもあれば、モダンを突き詰めているものもあったりと、実にさまざま。その幅の広さが面白いなあと思いますね。

イタリアでは職人がNoと言えばNoになる

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–専門学校を2年で卒業し、現地のデザイン事務所に就職された大田さんですが、学校で学んだことと実際の仕事でのギャップはありましたか?

在学中もよく企業研修を受けていたこともあり、それほどギャップはありませんでしたね。ただ、プレゼンの時になるほどなあと思ったことがあって。

–どういったことですか?

あるアパレルブランドとの仕事だったのですが、プレゼンする部屋にそのブランドの香水をあらかじめ吹きかけておくんですね。それで、そのブランドに合った音楽をかけたり、室内の光の加減を細かく調整したりと、プレゼンの場を気持ちの良い空間にしようと演出し尽くすんです。プレゼン後に皆で乾杯するためのワインまで用意して(笑)。

–すごい、そこまでするのですね。

この話はイタリアだからこそ、ということではないと思いますが、印象的でした。ギャップという点ではどちらかと言うと、日本に拠点を移してからの方がありました。

–あ、そうなのですね。どういったことでしょうか?

あくまで私が関わっていたデザインの話ですが、イタリアと日本でまず違うのと思ったのは、イタリアは分業制で、日本はそうではないということです。イタリアでは設計する人間とエンジニア、実際に作る人間が完全に分かれているので、設計書と出来上がったものが全然違うということもありました。

–設計者は何も言わないのですか?

場合にもよりますが、日本よりもイタリアの方が、実際に作る職人も同様にリスペクトされている傾向があり、設計書に書いてあることでも職人がNoと言えばNoになります。そこから詰める作業もありましたが、歯がゆい思いをしました。あとは、職人は基本、夜は働かないことが多いので、施工期間も日本より長いです。

–日本はそういうことはないのですか?

イタリアよりはないと思います。日本ではそれほど厳密に分業化されていないので、プロジェクト全体に関わる人数も少ないにもかかわらず、出来上がりは早いです。ちなみに、このように言うと日本の方が良く聞こえるかもしれませんが、あくまでスタイルの違いなので、一概に良し悪しで語るものではないと思います。

実は思った以上に、イタリアと日本との垣根はない

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–仕事の進め方ではなく、デザインへの考え方に対するギャップはありましたか?

その点については、実はそんなに大差ないと思っています。イタリアも日本も色々な国や時代から影響を受けつつ、さまざまなデザインを生み出してきているので、表面上での大きな違いはないように感じます。

–ちょっと意外だと思いましたが、言われてみれば確かにそうかもしれませんね。

ただ、その中で思うのは、イタリアでは先ほど言ったように、デコラティブな椅子もあればモダンな椅子もあります。もちろん日本でも両方あるのですが、流行り廃りの影響が大きいので、モダンなものがブームの時は皆モダンにしますし、デコラティブなものが人気になれば、皆デコラティブで揃える傾向が強いです。

–イタリアは違うのですか?

イタリアでもブームに流されやすい人はいると思いますが、自分の好き嫌いがはっきりしている人の方が多いと思います。インテリアに限らず、例えば何年も付き合いがある仕立て屋さんがいるとか、行きつけのバーがあるとか。なので、イタリアの方が日本よりも選択肢が多いと言いますか、例えモダンが流行りでも、決してデコラティブが格好悪いという風潮はありません。

–ああ、なるほど。

あとは個人的にイタリアに行ってよかったなあと思ったのが、人と人の縁を大事にすることを学べたことです。

–と、言いますと?

これは一概にそうとも言い切れないですが、イタリアの方が日本よりも、一度お仕事のご依頼をくださったクライアントさんとは長くお付き合いをさせていただく傾向が強いんです。日本の方が旬の人やデザイン事務所に依頼が集まりがちなのですが、イタリアでは一度良いと思ったところにずっとお願いすることが多いです。

–先ほどおっしゃった、好き嫌いがはっきりしていることに通じますね。

なので、気に入っていただくために、一期一会の気持ちでクライアントさんと向き合うことが大切だと身をもって学べました。また、長くお付き合いさせていただいているクライアントさんからまた別の企業さまをご紹介いただくこともあったりして、人とのつながりは本当に大事だなあとしみじみ思いました。

取材協力:THE TRIANGLE.JP(https://www.the-triangle.jp

テキスト:AGARU ITALIA(あがるイタリア)編集部

初出:この記事は2018年2月10日、公開されました@AGARU ITALIA