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子育てで仕事のスキルを習得。リカルダ・ゼッザ氏が提唱する「MAAM」とは

子育ては仕事に役立つスキルを学ぶ機会である―――。そう唱えるのは、EdTech(教育×テクノロジー)企業「LIFEED」の創設者兼最高経営責任者であり、「MAAM 母親業という修士号」の著者であり、二児の母でもあるイタリア人社会起業家のリカルダ・ゼッザさん。親としての役割が新たな能力を引き出すという「MAAM理論」に基づいた企業向けトレーニングを行う彼女は、2018年、フォーチュン誌が選ぶイタリアで最も影響力のある革新的な女性にも選ばれています。
一体リカルダさんの提唱する「MAAM」とは何なのでしょうか。その全貌に迫ります。


EdTech(教育×テクノロジー)企業「LIFEED」の創設者兼最高経営責任者であり、「MAAM 母親業という修士号」の著者であり、二児の母でもあるイタリア人社会起業家のリカルダ・ゼッザさん
リカルダ・ゼッザ氏(出典:Lifeedウェブサイトより)

企業勤めで経験した育児休暇に対する偏見

元々大企業で部長を務め、MBA(経営修士号)も保持するキャリアウーマンのリカルダさんですが、20年近く会社員として働く中でとあることに気づきます。それは、MBA(経営修士号)を取得するための休暇については会社によって奨励され、また経済的にも支援があるものの、産休・育児休暇については否定的に見られるということです。実際、経営幹部が修士課程から戻ると、これまで以上に敬意を持って扱われる傾向があり、意思決定や戦略的計画に関与し、多くの場合がより上の役職に昇進します。しかし産休や育児休暇の場合、コミットメントが低いと見なされ、産休・育児休暇後は単純な事務作業などの”女性的な”部署に配属されることが多くあるのです。


リカルダさん自身も36歳で出産すると、会社はそれを問題視しました。しかし、このことがリカルダさんにとって転機となったのです。リカルダさんは会社を退職、自分自身の道を歩むことを決意しました。


寝転がる赤ん坊の足

子育てを通して新たな能力を引き出す「MAAM理論」

会社を退職したリカルダさんは、自身が育児休暇中に学んだスキルに着目します。


子育てを通して、共感する能力、耳を傾ける能力、わずかな変化に気づく能力、やる気を与える能力など、人間関係に必要なスキルが急激に培われること。またマルチタスク能力や効率的な時間管理能力、問題に迅速に対応する能力や的確な優先順位づけなど、組織的能力も向上すること。さらに最も重要なのは、将来のビジョンを描き、子どもや家族の長期的な成長を想像し、目標を達成するための計画を立てること。これらは全て彼女自身が子育ての中で学んできたことでした。


赤ん坊のイメージ

自身の育児休暇中の経験をきっかけに、リカルダさんは『男女ともに血縁がなくても、親としての役割を担う人の脳の変化が新たな能力を引き出す』ことを科学的エビデンスに基づいて確立した「MAAM理論」を発表。それらを別の場面で応用する能力を「トランスジリエンス」と名付け、家庭と職場の双方で能力を移行することができると述べています。


企業トレーニングに革命を!

そして2015年、リカルダさんはEdTech企業「LIFEED」を創設。子育てはMBAを取得するのと同様に、集中的かつ価値のある学習であり、専門的な成長期間であると再定義し、MAAM理論に基づいた企業向けトレーニングを開発しています。これまで80社を超える大企業、15,000人を超える人々がMAAMプログラムに参加しました。


日本での講演経験も持ち、また世界最大の社会起業家ネットワーク「アショカ」において、厳格な基準をクリアした一流の社会起業家「アショカ・フェロー」にも選出されているリカルダさん。今後のさらなる飛躍に期待です。


https://lifeed.io/en/