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生きる歓びにあふれたイタリアンデザイン「エットレ・ソットサス—魔法がはじまるとき、デザインは生まれる」開催中!

Keiko Shimada

2026.07.13

まるで楽しそうにおしゃべりしているような家具やオブジェ、ガラス作品たち。イタリアンデザインの巨匠、エットレ・ソットサスの日本初となる大規模回顧展が、東京・日本橋のアーティゾン美術館で開催されています。大人から子どもまで、誰もが笑顔になれる展覧会の魅力をご紹介します。


「デザインとは何か」を問い続けたイタリアの巨匠

エットレ・ソットサス(1917-2007)は、20世紀イタリアデザインにおいて世界的に知られる巨匠。1950年代からオリべッティ社やポルトロノーヴァ社のデザイナーとして数々の名作を生みだし、1981年には国際的なデザイナー集団「メンフィス」を結成し、ポストモダンと評される革新的なデザインで一世を風靡しました。


合理性の追求に疑念をもち、色鮮やかで遊び心あふれるデザインを提案し、人々の暮らしを活きいきと輝かせることを目指したソットサス。初期から晩年におよぶ100点を超えるコレクションをもつ石橋財団は、ソットサスの作品112点に加え、ミケーレ・デ・ルッキや倉俣史朗など関連作家の作品5点、資料25点をあわせた計142点を展覧。時代を超えてデザインと向き合い、新しいチャレンジを続けた人生が浮かび上がります。


イタリア企業とのコラボで数々の名作を生んだ1950年代後半

1950年代のソットサスは、家具メーカーのポルトロノーヴァのアートディレクターとして、数々の名作家具を生み出しました。合理的なデザインが主流の時代、「それじゃ面白くないよ」と言わんばかりのポップなデザインは、インダストリアルデザインに新しい風を吹き込みました。

大胆なデザインのキャビネット
エットレ・ソットサス《モービル MS. 180》1959-63年頃(デザイン/製作)、製作:ポルトロノーヴァ、石橋財団アーティゾン美術館 © Erede Ettore Sottsass

「タイプライターといえばこれ!」と、誰もが思い浮かべるデザイン。これもソットサスのデザインだったのだと、今回の展覧会で初めて知りました。オリベッティ社のデザインコンサルタントを務めていたソットサスによって、無機質なタイプライターや計算機がポップに変身。2026年のいま見ても美しい、パーマネントなデザインです。

エットレ・ソットサスがデザインしたタイプライター
オリベッティ社のタイプライター

より自由に開花したデザインの遊び

展示会場でもひときわ目を惹く巨大なオブジェは、カウンターカルチャーが隆盛を迎えた1960年代にデザインした《トーテム》。トーテムとは、北米の先住民族などが自然界への敬意を込めて彫った木の柱のことで、ソットサスの《トーテム》も単なるオブジェではなく、自然界のパワーを象徴するものと言えるでしょう。

エットレ・ソットサスがデザインしたトーテム
4つの《トーテム》が並んだ圧巻の展示

この時代のソットサスは、東洋の宗教思想やヒッピーカルチャー、ポップカルチャーに着想を得ながら、新しい領域へと踏み込んだデザインを発表しています。

エットレ・ソットサス《トーテムのためのドローイング》
エットレ・ソットサス《トーテムのためのドローイング》1964年、石橋財団アーティゾン美術館 © Erede Ettore Sottsass

今回の展示で興味深いのは、スペイン・カタルーニャ地方の荒野を放浪しながら思索にふけり、デザイン哲学を見つめ直した70年代の作品も展示されていたこと。


1970年代、イタリアの社会情勢が傾き「鉛の時代」が始まると、ソットサスはミラノを離れ、スペインのカタルーニャ地方を放浪する旅に出ます。荒涼とした大自然のなか、木や石やロープなどを使って建築のようなオブジェをつくり、撮影した《メタファー(隠喩)》と題されたモノクロ写真からは、あまり知られていないソットサスの一面を垣間見ることができます。


一世を風靡したメンフィスの時代

1981年、ソットサスは若いデザイナーたちに声をかけ、まったく新しいデザインを探求するグループ、メンフィスを結成しました。この前衛的なデザイン集団には、世界各国からデザイナーが集まり、日本からは倉俣史朗、磯崎新、梅田正徳が参加。さまざまな色彩、形、装飾、素材を大胆に組み合わせた斬新なデザインの数々は、世界中の注目を集め、インテリアやプロダクトに自由をもたらしました。

エットレ・ソットサスがデザインした飾り棚
エットレ・ソットサス《マラバール》1982 年(デザイン/製作)、製作:メンフィス・ミラノ、ビトッシ、石橋財団アーティゾン美術館 © Erede Ettore Sottsass
エットレ・ソットサスがデザインしたガラスの器
完璧なフォルムとカラーリング、宝物のようなガラス作品

会場の奥まった部分に飾られていたのは、ソットサスのデザインを象徴する作品《カールトン》と《カサブランカ》。刻々と変化するライティングによって、大きな影が浮かび上がり、まるで劇場にいるかのような没入空間へ。

エットレ・ソットサス《カールトン》と《カサブランカ》が飾られた展示空間

ソットサスのデザイン哲学が華やかに開花した時代の名作を、新たな形で体感できる貴重な空間です。

エットレ・ソットサス《カールトン》
エットレ・ソットサス《カールトン》1981 年(デザイン/製作)、製作:メンフィス・ミラノ、石橋財団アーティゾン美術館 © Erede Ettore Sottsass
エットレ・ソットサス《カールトン》と《カサブランカ》が飾られた展示空間
《カールトン》と《カサブランカ》が飾られた空間は、刻々とライティングが変化して光と影が交錯し、物語を感じさせる心躍る展示に

まるで子どもが創ったような最晩年の作品

最後のコーナーに並んでいたのは、色鮮やかな素材を組み合わせた、遊び心あふれる花瓶たち。「1990年代―飽くなきデザインの冒険」をテーマにしたコーナーの作品は、メンフィス時代の完璧な美しさとはほど遠い、おもちゃで遊ぶ子どもが創ったようなフォルムやディテール。90歳を前に、ソットサスはより自由なデザインへと羽ばたいていたのかもしれません。

エットレ・ソットサス《花瓶》シリーズの展示
エットレ・ソットサス《花瓶 no.16》
エットレ・ソットサス《花瓶 no.16》2006 年(デザイン/製作)、製作:ギャラリー・モーマンス、ジーノ・チェネデーゼ・エ・フィリオ、ファン・テッテローデ・ガラス・スタジオ、石橋財団アーティゾン美術館 © Erede Ettore Sottsass

この生きる歓びに満ちた珠玉の作品たちをデザインした翌年、2007年にエットレ・ソットサスは90歳で没しました。生涯現役でデザインし続け、最後に遺したのがあのキラキラと輝く花瓶であったことに、胸をつかれました。イタリアデザインの巨匠でありながら、子どものような遊び心を忘れることなく、挑戦し続けた人生をデザインで辿る展覧会。


写真で何度も見ている名作たちも、たくさんの作品が集うように会場を埋め尽くし、語り合うように並んでいるのをみると、「魔法がはじまるとき、デザインは生まれる」というソットサスの言葉を引用したタイトルの意味を、身をもって実感しました。


ITALIANITY読者の皆さんも、夢のようなイタリアデザインの世界を、ぜひ体感してください。


「エットレ・ソットサス 魔法がはじまるとき、デザインは生まれる」エントランス

エットレ・ソットサス—魔法がはじまるとき、デザインは生まれる
10:00‒18:00(毎週金曜日は20:00 まで)
*入館は閉館の30分前まで
休館日: 月曜日(7月20日、9月21日は開館)、7月21日、9月24日

アーティゾン美術館 6階展示室

入館料(税込):日時指定予約制 ウェブ予約チケット1,200円、窓口販売チケット1,500円、学生無料(要ウェブ予約)

*中学生以下はウェブ予約不要。
*この料金で同時開催「瀧口修造 書くことと描くこと」展もご覧いただけます。
https://www.artizon.museum/exhibition_sp/sottsass2026/