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イタリアで“和食材”が急増中!フィレンツェ在住日本人が語る、進化系イタリアンのいま

小林 真子 Mako Kobayashi

2026.01.29

今回はイタリアで加速している「和食材ブーム」について、日本人としての驚きと喜び、そして時に「え、そう来る!?」という軽い混乱を交えながらお伝えしたいと思います。

イタリアでは今、二つの“和食ブーム”が同時進行しています。
ひとつは寿司やラーメンといった、いわゆる和食レストランの人気。これは皆さんもご存知の通り。
そしてもうひとつが、意識高い系イタリアンが日本の食材を積極的に料理へ取り入れはじめたブーム。


今回お伝えするのは後者の方。今、イタリアのトップシェフたちが日本の食材でどんな“魔法”を起こしているのか、その最前線リポートです。


ミシュラン星レストランが続々参戦:和食材がイタリア料理に溶け込む時代へ

 ここ数年、イタリアのレストランで“日本の味”と出会う頻度は確実に増えています。イタリア人の日本旅行が大ブーム中であることも後押しして、シェフたちの好奇心に火がついているようです。


14年前に私がイタリアへ来た頃は、食文化に関しては“保守の王国”という印象が強く、和食といえば寿司がちらほら…ラーメンなんてほぼ未知の存在でした。ミラノでおしゃれなイタリア人女性がラーメンをフォークにくるくる巻き付けて、音を立てずにパスタのように食べていた姿を見て「やっぱりそう食べるのか・・。」なんてちょっと残念に思ったものです。しかし今や、イタリア人たちもラーメンは器用にお箸を使って食べ、ミシュラン星つきレストランでは抹茶やゆずが普通にメニューに登場する時代になりました。

イタリアのシェフと抹茶のパネットーネ

昨年末にフィレンツェで開催されたパネットーネイベントでは、鮮やかな緑色のパネットーネを発見。「あ、ピスタチオかな」と思いきや、なんと抹茶。抹茶よ、ついにパネットーネ界にまで進出するとは…日本の茶畑に報告したいと思ったものです。日本ではケーキからパンまで何にでも使われる抹茶ですが、イタリアでここまで浸透してきたのはちょっとした革命です。日本の緑茶はTe’ Verde(テ・ヴェルデ)といいますが、抹茶はそのまま「マッチャ」と呼ばれています。


イタリア料理に登場する“日本の味”:私が実際に見かけた食材リスト

イタリア料理のメニューに「うまみ」「こんぶ」「かつおぶし」など日本語が並ぶ日が来るとは、14年前の私は夢にも思いませんでした。日本人の私としては、メニューに日本語らしき単語が踊っていると、つい目が吸い寄せられてしまいます。


ここ数年で特によく見かける食材はこちら(醤油・酒・寿司・ラーメンなど“殿堂入り組”は除外)


抹茶、ゆず、かつおぶし、とんかつ、とんこつ、てりやき、大根、だし、うまみ、こんぶ、海苔、梅干し、刺身、味噌、わさび、枝豆、しいたけ、もち


どうですか。なかなかの顔ぶれでしょう?これらの単語は翻訳せずにそのままアルファベット変換して使われています。


衝撃の出会い:かつお節が舞うピザ、そして味噌が香るカクテル

ここ最近で一番衝撃を受けたのはかつお節やかじきの刺し身がのったピザ。しかも手がけたのは、グレーヴェ・イン・キアンティのピザの有名店「Lo Spela(ロ・スペラ)」。ピッツァイオーロ(ピザ職人)のTommazo Mazzei(トマゾ・マッゼイ)のチャレンジ精神には脱帽です。


また、トスカーナやその周辺のミシュランシェフなどスターシェフが一堂に介すイベント”Charity Chef Night(チャリティーシェフナイト)”でも、日本の食材がイタリア料理に溶け込んだひと皿をいくつも見かけました。2024年開催では一つ星レストラン「Como Castello del Nero(コモ・カステッロ・デル・ネロ)」のスターシェフGiovanni Luca Di Pirro(ジョヴァンニ・ルカ・ディ・ピッロ)が”梅干し”を効かせた一品を。「イタリア人はこう組み合わせるのか !」と学びになるほどの新鮮なアプローチでした。

ジョヴァンニ・ルカ・ディ・ピッロシェフと梅干しを効かせた一品


2025年開催では一つ星レストラン「Atman(アットマン)」のスターシェフMarco Cahssai(マルコ・カッサイ)がパルミジャーノの「ダシ」を効かせた一品を披露。メニューにDashiとそのまま書かれていましたが、果たして私以外の何人がその言葉を理解したのでしょうか・・。

スターシェフ、マルコ・カッサイ)とパルミジャーノの「ダシ」を効かせた料理。

「Pizzeria Oro(ピッツェリア・オーロ)」のペルー出身のシェフJosue De La Cruz(ホセ・デ・ラ・クルス)はイタリア・フランス・日本の“三カ国ミックス料理”を披露してくれましたが、その中の和風アレンジのTonno di Chianti(トンノ・ディ・キアンティ)は絶品。これはもう完全和食といって差し支えなく、照り焼き風のソースが豚肉に見事にマッチしていました。ペルー人シェフの方が、日本の味つけに近い料理を出す印象を受けました。


ペルー関連といえば、老舗ペルーレストラン「Sevi(セーヴィ)」の 味噌カクテル。味噌をカクテルに…? ! 日本人でも思いつかない発想ですが、(といいつつ、私がイタリアにいる間に日本でブームになっていたらすみません)、これが日本へ逆輸入したいレベルの驚愕の美味しさでした。

老舗ペルーレストラン「セーヴィ)」の バーテンダーと味噌カクテル

ちなみにイタリア人バーテンダーも負けておらず、最近では“UMAMI”入りリキュールなんてものまで登場。フィレンツェの中心地にあるManifattura Firenze(マニファットゥーラ・フィレンツェ)という粋なBARで出してもらった、うまみのアクセントを見事に活かしたカクテルにはセンスを感じました。


イタリアのチャレンジ精神はどこまで進化する? 日本人としての複雑な胸中

ミシュランスターシェフたちが、日本の食材で創作意欲に火をつけるのは理解できます。そもそも日本人も、イタリア料理を日本風に大胆にアレンジしてきました。


「ミラノドリア」や「ナポリタン」なんて、イタリア人には絶対言えないメニューだって大人気です。(どちらも、イタリア料理には存在しませんからね、念の為!そして、イタリア人に説明すると、皆こぞって”発狂”します・・。)


ですから、イタリアでもそのうち“京都丼”や“大阪餃子”みたいな“存在しない日本食”が誕生しても不思議ではありません。(ちょっと怖いですが、それも楽しみな気がします・・。)


現時点ではまだ「あぁ〜惜しい !この食材はこういう使い方じゃない方がいいのにな〜。」と思う場面も正直多いです。でも、それこそが“イタリアナイズされてきている証拠”なのかもしれません。


13年前は“リゾット寿司”の悪夢。そこからの大進化に拍手を送りたい

さてここで、イタリアに来たばかりの頃のトラウマをひとつ。13年前、イタリア某所で出会ったのは、握り寿司のシャリがよりによって「リゾット」そのものだった“食感気持ち悪すぎる握り寿司”。あまりの違和感に箸が止まりました。シャリとは呼べない、それはそれはひどい食感でした。イタリア人は日本のお米の炊き方を知らないのかと・・。


さらに、ぬるいスープに乾麺が半分だけ戻った、(つまりお湯がぬるすぎて、乾麺が茹できらなかったため、半分硬いままの)ラーメンに遭遇したこともあります。これがなんと「和食レストラン」と謳ったレストランで出てきたので、もう泣けてきました。


しかし今はどうでしょう。


ミシュランシェフがしいたけや抹茶を使いこなし、バーテンダーが味噌やUMAMIで遊び、ピッツァイオーロがかつお節を熱々ピザの上で踊らせる時代。


イタリアで使われる和食材レベルは、驚くほどのスピードで進化していることを実感します。


イタリア式“創作和食”の未来へ:次は“京都丼”か“フィレンツェらーめん”か?

イタリア料理と日本料理は、ともに「素材を愛する」料理。歴史の深さ、哲学の強さ、そしてグローバル人気の高さ――共通点ばかりです。


日本人が「ミラノドリア」「ナポリタン」というイタリア人が聞いたら発狂するような料理を生み出してきたのですから、イタリアでは”京都丼”や“フィレンツェらーめん”など、未知のイタリアン和食が生まれても不思議じゃありません。


日本人が「なにそれ? !」と思っても、イタリア人の舌には“革命的に美味しい”なんてこともあるかもしれません。実際、日本人にはミラノドリアとナポリタンは定番大人気料理です。イタリアと日本の2大二大料理の文化摩擦がここ数年急激に発生するようになり、これから先、どんなフュージョンが生まれるのか、ワクワクが止まりません !


※フィレンツェ在住の筆者のインスタグラムでは、この記事に登場した各レストランを詳しく紹介する予定ですので、あわせてこちらもご覧ください。

https://www.instagram.com/makokobayashi_firenze


【筆者・小林真子、ラジオ出演情報】
2月1日(日)AM 9:20〜9:40頃
J-WAVE 81.3FM『ACROSS THE SKY』 にて
「ミラノ・コルティナ冬季オリンピック」にちなんで、開催地の一つであるコルティナ・ダンペッツォやミラノの魅力について語ります。

ぜひお聴きください!