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ジャズ・ピアニスト 西山瞳がイタリア音楽を深掘り!⑪情熱的なソロが圧巻のジャズピアニスト アントニオ・ファラオ

Hitomi Nishiyama

2026.01.22

ソロアルバムの『Songs』も話題の人気ジャズ・ピアニスト西山瞳が、イタリア音楽を深掘りする連載。今回は、“攻めのコンテンポラリー・ジャズピアニスト”アントニオ・ファラオをフィーチャーします。



生命力溢れる煌びやかなタッチ


イタリアのピアニスト、Antonio Faraoアントニオ・ファラオは、とても硬派なコンテンポラリー・ジャズのピアニストです。
重量感があり、生命力溢れる煌びやかなタッチ、決して保守的にならず、攻めのピアノ。90年代以降のコンテンポラリー・ジャズの語法で、どこに出てもパワー負けしない圧倒感。
ジャズの伝統にのっとった理知的なオリジナル曲を、剛腕ともいえる情熱的なソロでグイグイと広げていく様は、とても爽快です。

ピアノを弾くジャズ・ピアニスト、アントニオ・ファラオ

ニューヨークの第一線ジャズミュージシャンとも共演が多く、Enja Records(ドイツ)、CAM Jazz(イタリア)、Criss Cross Jazz(オランダ)といった骨太で重量級の作品をリリースする名門ジャズレーベルから、多数の作品をリリースしています。


1965年生まれ、イタリアのローマ出身のファラオは、10代の頃からクラブで演奏を始め、アルバム・デビューは1999年『Black Inside』でした。翌2000年にフランスの名ドラマー、ダニエル・ユメールとのアルバム『Borderlines』が大阪のヨーロッパ・ジャズ専門レーベルの澤野工房からリリースされたこともあり、日本のヨーロッパ・ジャズ・ファンにも広く知られ、一気に大注目される存在となりました。私もこの作品から追いかけて聴いています。


まず最初にご紹介したいのが、ファラオの魅力の詰まった最近のトリオ作品、2024年『Tributes』。


大御所ジョン・パティトゥッチ(ベース)とジェフ・バラード(ドラムス)と編成されたトリオは、ブランフォード・マルサリスが切り拓いたコンテンポラリー・ジャズ直系の作品。
ファラオは、やケニー・カークランド(ピアノ)やジョーイ・カルデラッツォ(ピアノ)など、90年代コンテンポラリーのピアニストの系譜に並べられる存在ですが、オリジナル曲は昔から一貫して、他者を気軽に寄せ付けないハードボイルドさがあります。理解しようと聴くと難解に感じる方もいると思いますが、このハードボイルドな音圧、空気に飲まれてしまって下さい。3曲目”Shock”がオススメです。


音数はかなり多く、美しさと力強さが両立した挑戦的な演奏を繰り広げます。


一流ミュージシャンとのセッションも多彩

管楽器との作品も素晴らしく、2013年作品『Evan』は、ジョー・ロヴァーノ(サックス)との共演作。アイラ・コールマン(ベース)、ジャック・ディジョネット(ドラムス)のリズムセクションに、ロヴァーノの豪快かつ柔軟で表情豊か、少しのチャーミングさもある歌心のあるサックスが加わります。ロヴァーノの表現にフィットするように、様々にバッキングするピアノ、ファラオの演奏も硬軟織り交ぜたソロとバッキングになっており、非常に素晴らしいんです。


2014年には、今度はクリス・ポッター(サックス)を迎えて『Thorn』を発表。
こちらは、ドリュー・グレス(ベース)、ジャック・ディジョネット(ドラムス)という布陣。クリス・ポッターといえば、無敵感すらあるテクニックで、ゴリゴリとアンサンブルを先導し、非常に華やかな演奏をするプレイヤーです。このポッターに引き上げられ、一層華やかに緊張感を爆発させるファラオ。音数の多いポッターに、力もバリエーションも満点で打ち返すバッキング。見事です。


このアルバム、ドラマーのジャック・ディジョネットが生き生きと叩いており、楽しそうなんですよ。


パゾリーニに捧げた美しい作品も!

また、フランスの名ドラマー、ダニエル・ユメールとの共演も多いファラオ。
2005年『Take On Pasolini』は、イタリアの劇作家・詩人・批評家でもあったピエロ・パオロ・パゾリーニに捧げた作品で、ドラムにダニエル・ユメール、ベースにミロスラフ・ヴィトウスという、ジャズファン垂涎のピアノトリオ。

パゾリーニ関連のカヴァーの他に、パゾリーニに捧げたファラオのオリジナル曲が4曲入っているのですが、これが4曲とも美しく素晴らしい演奏です。
そのうちの1曲”Teorema”は、情熱的で格調高い演奏。


他にもアンドレ・チェッカレリ(ドラム)との共演も多く、音楽的かつ戦闘力の高いドラマーから、絶大な信頼を寄せられています。


ジャズ界の神々の遊びのようなライヴ

こちらは、アントニオ・ファラオの公式YouTubeチャンネルにアップされていた、2015年のサンレモで行われたジャズフェスティバルのライブビデオですが、クリス・ポッター(サックス)、エディ・ゴメス(ベース)、ジャック・ディジョネット(ドラム)というメンバーで演奏される、ジャズ・スタンダード曲”星影のステラ”。神々の遊びのような演奏です。



2025年『Heal The World』は、ジャズ・スタンダード曲を含めた、カヴァー曲集。タイトル曲であるマイケル・ジャクソンの”Heal The World”はボーカルも入り、リラックスしたムード。ファラオのディスコグラフィの中でも、最もリラックスした空気で聴きやすい一枚ではないでしょうか。


精力的に演奏活動やアルバムを発表するファラオ、2026年も早速ソロアルバム『Kind of.. Piano solo』が1月9日から解禁になりました。今年もファラオの活動、見逃せません。



西山瞳のアルバム『Songs』のジャケット写真

Songs / Hitomi Nishiyama 3,520

西山瞳初期のオリジナル曲を、ピアノソロで収録した「Songs ソングス」。秘めやかに紡がれる珠玉のピアノ・コレクションを、ぜひお聴きください。