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クラフツマンシップに魅せられた
イタリア人ファッションジャーナリスト、
ファビオ・アタナシオ氏独占インタビュー

ミラノコレクションやピッティウオモなど、最先端のファッションが集結するイタリア。伝統的なクラフツマンシップが感じられるファッションは、日本を含む世界中を魅了しています。そしてそれはイタリア人にとっても同じこと。

今回お話を伺うファビオ・アタナシオ氏は、メンズファッションに興味がある人なら既にご存じかもしれませんが、今最も注目を集めるファッションジャーナリストの一人。イタリアのオーダーメイドテーラリングやクラフツマンシップについて語る彼のウェブサイト「The Bespoke Dudes」が人気を博し、その後自身のアイウェアブランドを立ち上げるまでに至りました。現在、Instagramフォロワーは約25万人を誇るファビオ氏の成功までの道のりに迫ります。

クラフツマンシップに対する情熱から生まれたブログ

19歳までナポリで過ごし、その後ミラノへと移ったファビオ氏。大学では意外にも、法律を勉強していたそうです。

「ミラノにあるボッコーニ大学で法律を勉強しており、将来は弁護士になるだろうと思っていました。しかし洋服や男性が持つエレガンスさ、そして世界中のクラフツマンシップに対する強い情熱がいつもありましたね。」

自分自身の情熱に気付きながらも、法律を勉強し続けた学生時代。奨学金でブエノスアイレスで滞在していた時、「The Bespoke Dudes」を立ち上げることを決意しました。

「母国から遠く離れた場所での滞在が、インスピレーションの源だったのを覚えています。そしてミラノに戻り、今こそ自分の情熱を試す時だと思いました。弁護士になるのではなく、自分が本当にやりたいこと、つまりイタリアの職人の話を伝えることを決意したのです。」

そして2012年、自身のウェブサイト「The Bespoke Dudes」をスタート。これまで若者の視点からイタリア語と英語で職人について語るウェブサイトはなく、「The Bespoke Dudes」が初のウェブサイトとなりました。

「これまで若者視点から、イタリア語と英語で職人について語るウェブサイトがなかったのはラッキーでしたね。そして私の強い情熱に導かれるまま、職人の店を訪れインタビューを行い、彼らの話をしてもらいました。そしてウェブサイトに彼らの話を掲載するのです。ミラノやフィレンツェ、ローマやナポリなどイタリアの主要都市を回り、職人技について話を聞いていく中で、自分自身の知識もどんどん増えていきました。それによって、不審がられることもよくありましたよ。一体私が何者なのか、なぜインタビューをしたいのか、ってね。私はただ職人たちのストーリーを読者に届けたいだけだと伝えると、職人たちも理解してくれました。実際それが私のやりたいことですからね。私にとってメインの目標は、今も昔も変わらず、イタリアのクラフツマンシップの美しさを伝え、サポートすることなのです。」「The Bespoke Dudes」は、直訳すると「オーダーメイドの奴」。そこにはファビオ氏のオーダーメイド業界に対する思いが込められています。

「この名前を思いついたのは、大学の学食で座っていた時でしたね。まず第一に、音が気に入りました。そして何より、フォーマルな言葉ととカジュアルな言葉のミックスが気に入ったのです。”bespoke”はオーダーメイドを意味し、常に上流階級の世界を指す言葉ですが、一方”dudes”は、特にアメリカの若者が使う言葉です。まさにこれは当時の私、オーダーメイドの業界に新しい風を吹かせたい若者、を象徴するのにぴったりな言葉でした。オーダーメイド業界から”ほこり”を取り除くこと、それこそ私がやりたいことでしたね。当時、また現代でもそうですが、オーダーメイド製品は若者の手に届かないものとして認識されています。大手ブランドよりお手頃な価格で提供する職人もいることを知らない人もいます。」

自身のアイウェアブランド「The Bespoke Dudes Eyewear」設立

「The Bespoke Dudes」を始めてから3年が経過した2015年、読者から眼鏡やサングラスに関する質問が届くようになったというファビオ氏。これが自身のアイウェアブランド「The Bespoke Dudes Eyewear」の設立のスタートだったと語ります。

「毎週のように、眼鏡やサングラスをどこで手に入れたのかという質問のメールが来るようになったのを覚えています。私が着用していたことで、読者とそのブランドが繋がったのです。現在私が経営している「The Bespoke Dudes Eyewear」も、ウェブサイトで取り上げているブランドと同じく、イタリアの職人による手作りがコンセプトです。」

この活動の重要な点は、職人と一緒に「芸術を創る」ことと、ブランドのビジネスという側面を分ける必要があることを理解することとファビオ氏は言います。

「2015年、私とビジネスパートナーであるアンドレアは、自分たちのプロダクトを作ることを決めました。これまで主要なブランドと既に仕事をしており、彼らのプロダクトを自分の読者に向けて紹介していたのですが、どうして同じように自分たちのプロダクトを紹介しないのか自問し、そして実行することにしました。

そして優れたアイウェア製造で有名なヴェネト地域のカドーレにある、小さな家族経営のワークショップを訪れこの話をしたところ、職人はそのアイディアに賛同してくれました。最初の生産数がわずか20個だったことは、決して忘れることはないでしょう。5年半を経た現在では、一期に約1万個のサングラスを生産しています。」

自分たちのアイウェアブランドを立ち上げるということは、彼らにとってはもちろん、生産者にとっても大きな賭けでした。アイウェア業界の経験はなく、自己資金で運営していたため十分な資金もない、この若い二人が持ち合わせていたのは強い情熱だけでした。

「新しいプロダクトを作りたいと生産者にお願いしましたが、生産者にとっては嬉しくないケースですよね。経験もない若者が、強い情熱だけでアイウェアを作りたいっていうのですから。大きな賭けであったことは確かです。しかし結果的に、この賭けは勝利を収めることになったのです。」

現在カドーレには、約5人の職人が彼らと一緒に働いています。ビジネスは順調に進んでおり、今後もさらに拡大していく予定であるとファビオ氏は述べています。

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