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アザミやアーティチョークの花で固めてつくる、ヴォルテッラのペコリーノ/トスカーナ州主催プレスツアー<第二回>

トスカーナ州(Regione Toscana)主催のプレスツアーに招待されることになり、10月20日〜22日の3日間に渡ってトスカーナ州各地の美味しいもの名産地を訪れてきました。

前回の「トスカーナ州から招待!ご当地グルメの”食い倒れ”プレスツアーに参加しました<第一回>」はこちら

今回はそのプレスツアーの二日目、ヴォルテッラでつくられているペコリーノ(羊のチーズ)のリポートです。この日はシエナのホテルから出発し、ヴォルテッラへとバスで向かいました。目的地はヴォルテッラのふもとにある、アグリツーリズモ「ファットリア・リスケト(Fattoria Lischeto)」です。秋が深まり木々が黄色く色づいた美しい紅葉を車窓から眺めていると、シエナから1時間ほどで目的地に到着しました。

ジョバンニさんの笑顔に迎えられるアグリツーリズム「ファットリア・リスケト」

ファットリア・リスケトはヴォルテッラを見渡せる広大な丘陵地帯にあるチーズ工房&アグリツーリズムで、最寄りの街ヴォルテッラからは車で10分程度です。ここでは、農場宿泊体験、農場でつくられる美味しいチーズの試食会や併設レストランでの食事を楽しめます。

ジョバンニさんの笑顔に迎えられるアグリツーリズム「ファットリア・リスケト」

このファットリア・リスケトの経営者であるジョバンニ・カンナスさんは、ヴォルテッラのペコリーノチーズ協会の会長も務めています。パッと見はイカつい風貌ですが、クシャッと笑うと笑顔が人懐っこくてとっても親しみやすい素敵な方でした。

ファットリア・リスケトの経営者であるジョバンニ・カンナス

ジョバンニさんの家族のルーツはサルデーニャで、総祖父の代からサルデーニャで羊飼いをしていました。1961年にジョバンニさんの両親はトスカーナへ移り住み、ヴォルテッラの地で農業を始めました。羊飼いを始めたのは息子さんのジョバンニさんで、チーズづくりもジョバンニさんが始めました。このチーズづくりには面白いエピソードがあります。

羊の群れ

80年代、ジョバンニさんは、当時大ファンだったイタリアの有名歌手レナート・ゼロに会うチャンスがあったそうです。その時ジョバンニさんはレナート・ゼロに自家製の羊乳で作ったリコッタチーズを食べてもらったのだそうです。すると、レナート・ゼロは「こんなに美味しいリコッタチーズは食べたことがない!」と絶賛してくれたことから、ジョバンニさんはチーズづくりを決意したそうです。そして1990年から実際にチーズ工房をつくり、チーズ製造をスタートさせました。憧れの歌手の鶴の一声でチーズづくりをはじめ、今ではそのペコリーノ協会の会長になっているのですから、人生は面白いものですね。しかも、現在では海外でも人気となり、ドイツ、デンマーク、ベルギー、スイス、アメリカ、スペイン、イギリスなどでも販売されるほどに。

ジョバンニさんの笑顔に迎えられるアグリツーリズム「ファットリア・リスケト」

ジョバンニさんのお話は面白くてみんなついつい聞き入ってしまったのですが、もうひとつ面白かったのがこのエピソード。

ファットリア・リスケトの経営者であるジョバンニ・カンナス

こちらも80年代の話ですが、「当時ディスコに出かけるのにすっかりハマちゃってね。羊の世話が終わると隣町の有名ディスコまで行って、そこで朝の5時まで踊ったものだよ。そして、ディスコから帰ってそのまま羊の世話をし、それから昼過ぎまで寝て、昼食後にまた羊の世話をし、翌日もディスコへ出かける日々だったんだよ。」と笑顔で思い出を披露してくれました。時にはチーズをディスコの入り口へ置いて、ディスコで踊った後にチーズを持ち帰っていたのだとか。ジョバンニさん、なかなかファンキーな羊飼いだったんですね。生産者からこんな楽しいエピソードを聞けることもこのツアーの大きな魅力でした。

アグリツーリズム「ファットリア・リスケト」のチーズ

アグリツーリズム「ファットリア・リスケト」のチーズ

アザミやアーティチョークの花で固めてつくるバルゼ・ヴォルテッラーネのペコリーノ

ヴォルテッラを含めたこの地方で創られているペコリーノは、ペコリーノ・デッレ・バルゼ・ヴォルテッラーネ(Pecorino delle balze volterrane)と呼ばれていますが、2015年からDOPに認定されました。DOPとはイタリアではご当地の特産品を守る目的の認定証で、産地と製造法を守っている特産品に対して与えられます。

ペコリーノ・デッレ・バルゼ・ヴォルテッラーネ

ペコリーノ・デッレ・バルゼ・ヴォルテッラーネが他のチーズと違うのは、アザミの一種カルドンやアーティチョークの花などの植物の凝固剤でつくられている点です。ですから原料は新鮮な羊の乳と植物の凝固剤のみ。一般的なチーズづくりには哺乳期間中の羊やヤギなどの胃でつくられる酵素の混合物レンネット(凝乳酵素)を使うので、植物の凝固剤でつくるペコリーノ・デッレ・バルゼ・ヴォルテッラーネはかなり異色の存在なのです。

さらに、使う羊はサルデーニャ産であることもDOPの製造ルールです。また、熟成期間によって45日〜6ヶ月もの、6〜12ヶ月もの、12ヶ月以上ものと3カテゴリーに分けられているのも特徴です。

ジョバンニさんの愛がつまったペコリーノ三昧のランチ

ランチはもちろん、ジョバンニさん自慢のチーズがメインです。ファットリア・リスケトではペコリーノ・デッレ・バルゼ・ヴォルテッラーネ以外にも沢山の種類の羊のチーズを製造しており、いくつものチーズの試食が行われました。

ジョバンニさんの愛がつまったペコリーノ三昧のランチ

ずらっと並んだチーズは熟成期間が異なったもので、食べる順番に並んでいます。右端の軽やかな味わいのフレッシュなものから、反時計回りに熟成期間の長い味のしっかりしたものへと食べ進めます。

ジョバンニさんの愛がつまったペコリーノ三昧のランチ

イタリアでペコリーノとえばラツィオ州やサルデーニャ州のペコリーノ・ロマーノやここトスカーナ州のペコリーノ・トスカーノなどがありますが、塩気の強いペコリーノ・ロマーノに比べてトスカーは塩気が抑えめでマイルドな味わいでそのまま生食でもいただけます。このファットリア・リスケトのチーズも臭いも弱く、クセの無いとても食べやすい非常にマイルドな味わいでした。

ジョバンニさんの愛がつまったペコリーノ三昧のランチ

そしてこのランチで一番歓声があがったのがこちらの、ピーチのカーチョ・エ・ペーペ。ピーチというのはシエナなどで食べられる日本のうどんのような太いパスタのことで、このピーチもファットリア・リスケトでつくられています。

カーチョ(チーズ)とペーペ(コショウ)という名前の通り、チーズをコショウで味付けしたパスタ料理ですが、とろけたペコリーノがたっぷりピーチにからまったカーチョ・エ・ペーペは控えめに言って最高でした。ああ、なんて幸せ・・。

ジョバンニさんの愛がつまったペコリーノ三昧のランチ

そしてデザートにはペコリーノのアイスクリームが。もうお腹いっぱいでこれ以上食べられない・・と苦しんでいたのですが、味わわずにはいられません。こちらもまた絶品で、前日の食べすぎの反省を全く生かしていない自分のバカさ加減に呆れながらもやっぱり完食してしまいました。

Fattoria Lischeto(ファットリア・リスケト)
住所 Loc. Lischeto S.P del Monte Volterrano 56048 Volterra (Pi)
URL https://www.agrilischeto.com/

トスカーナ最大州のオリーブオイル製造所で5種類のオリーブの試食

ジョバンニさんに別れを告げ、ヴォルテッラから車で40分ほど走り、最高級ワインのサッシカイアで有名なボルゲリへと移動しました。ここではトスカーナ最大級のオリーブオイル製造所テッレ・デレトゥリア(Terre dell’Etruria)を見学しました。

トスカーナ最大級のオリーブオイル製造所テッレ・デレトゥリア(Terre dell’Etruria)

過去にもオリーブオイル製造所は見学したことがあるのですが、ここは従業員が204人いるとても大きい規模の製造所。設備も近代的でした。

トスカーナ最大級のオリーブオイル製造所テッレ・デレトゥリア(Terre dell’Etruria)

トスカーナ最大級のオリーブオイル製造所テッレ・デレトゥリア(Terre dell’Etruria)

トスカーナ最大級のオリーブオイル製造所テッレ・デレトゥリア(Terre dell’Etruria)

ここではオリーブオイルの他にも、ワイン、パスタ、フルーツジャムなども製造しており、契約を交わした生産者のみと取引をしていますが、その数は3500ほどになります。

トスカーナ最大級のオリーブオイル製造所テッレ・デレトゥリア(Terre dell’Etruria)

企業プレゼンテーションもモニターやパンフレットを使ったビジネスライクなもので、エキストラバージンオリーブオイルの試食もきっちり準備されていました。

トスカーナ最大級のオリーブオイル製造所テッレ・デレトゥリア(Terre dell’Etruria)

よくあるオリーブオイルの試食は異なったメーカーのオイルの味比べですが、ここでは5種類のオリーブの味比べが行われました。絞ってまだ15日程度のできたての新オリーブオイルなので、まだ緑色をしています。それでも、透明度の高いもの、白濁しているものと、見た目だけでも異なり、味もそれぞれ個性が違いました。

絞ってまだ15日程度のできたての新オリーブオイル

Terre dell’Etruria(テッレ・デッレトゥリア)
住所 Via del Casone Ugolino 2 57022 Donoratico (LI)
URL https://www.terretruria.it/ 

港町リヴォルノで豪快な魚介スープの郷土料理「カッチュッコ」ディナー

二日目の最後は港町リヴォルノです。リヴォルノは画家モディリアーニやオペラ作曲家マスカーニの生まれ故郷です。

港町リヴォルノ

この街を代表する郷土料理といえば魚介のスープ「カッチュッコ(cacciucco)」です。大きな魚が丸ごと煮込まれた豪快な料理で、スープの底にトスカーナの塩なしパンを敷いて魚介スープを染み込ませていただきます。

郷土料理といえば魚介のスープ「カッチュッコ」

カッチュッコだけでもボリューム満点の大きな一皿なので、てっきりカッチュッコだけかと思っていたのですが、ツナサラダに小魚のフライの前菜までついており、この日もやっぱり怒涛の食事攻めの一日に。前日の食べすぎが尾を引いている今日一日だったにも関わらず、この日もついつい食べすぎてしまい、前日に続いて胃腸消化薬をこっそり服用することとなってしまいました。本当にイタリア人たちはよく食べます。本当に彼らの胃袋はひとつだけ?そんなことを思いながら二日目が終了しました。

Aragosta(アラゴスタ)
住所 Piazza dell’Arsenale, 6, 57123 Livorno LI
URL (トリップアドバイザー)https://www.tripadvisor.it/Restaurant_Review-g187897-d2208431-Reviews-Ristorante_Aragosta-Livorno_Province_of_Livorno_Tuscany.html

この日、トスカーナ州が用意してくれたホテルはレストランからリヴォルノのシンボルともいえる像「4人のモーリタニア人の記念碑」と港の真ん前にあり、部屋の窓からは記念碑と港の景色が楽しめました。鉄道駅からは遠いですが、フェリー乗り場からはすぐの場所なので、フェリー利用者にとってもおすすめのホテルです。

トスカーナ州が用意してくれたホテルHotel Gran Duca(ホテル・グラン・ドゥカ)

Hotel Gran Duca(ホテル・グラン・ドゥカ)
住所 Piazza Giuseppe Micheli, 57123 Livorno LI
URL http://www.granduca.it/

さて、次回はプレスツアーのリポート最終回。大理石に囲まれたコロンナータ村でつくられるラルドをご紹介します。

<トスカーナ州主催プレスツアーリポート>
トスカーナ州から招待!ご当地グルメの”食い倒れ”プレスツアーに参加しました<第一回>
大理石の器で熟成される、真っ白な「コロンナータ村のラルド」口の中でトロける絶品/トスカーナ州主催プレスツアー<第三回>

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