普段はあまり身近ではない東京の「島」の食材を堪能し、その魅力を発見できる複数の企画が晩夏からこの秋にかけて開催されました。なぜ、そこでイタリア料理が提供されたのでしょうか。そこには、意外な共通点がありました。
東京都にある新島村(新島・式根島)は、島の食材や産業から新たな観光資源の魅力創出と情報発信を目的に、同自治体初となる食の体験型キャンペーン「AMORE! 新島」を、2024年8月1日~8月31日の1カ月間開催しました。体験の場として、イタリアの伝統的な食文化を伝えるグローバルブランド「EATALY(イータリー)」をパートナーに迎え、銀座、湘南、原宿、丸の内、日本橋といった国内全5店舗で限定メニューを展開。
イータリーは、「EAT BETTER, LIVE BETTER(より食事は人生をより豊かにする)」というミッションのもと、「EAT, SHOP, LEARN(食べる・買う・学ぶ)」という3つの活動を通して、イタリア食材と食文化、持続可能な生産を行うイタリアの地方の生産者の顔とストーリーを伝えながら、食を通じて広がる上質なライフスタイルを提唱しています。単なるフードマーケットではなく「おいしく、きれいで、正しい」食品について知識を深めたいと望む、食文化に対して高い意識を持つ人々のために、様々な情報を発信しています。
現在、イタリア、日本、アメリカ、カナダ、アラブ首長国連邦、ドイツ、イギリス、フランス、スウェーデン、ブラジル、トルコ、韓国、サウジアラビアなど世界15カ国の50以上の拠点で事業展開中です。
シチリアと東京の火山島を結ぶ石
マグマが地上付近で急激に冷え固まって生まれる黒雲母流紋岩、いわゆる「コーガ石」は、世界広しといえど、遠く離れたシチリア州のリパリ島と新島村でしか採れないと言われています。建材などに使われてきたコーガ石を、新島ではガラスに加工する独自の文化が育まれ、今日に至っています。
共に温暖な気候で海の幸が豊富であることから、新島のガラス食器に島の特産品を用いて、南イタリアにインスパイアされた料理が提供されたことは、コーガ石の物語をより具体的に体験することに繋がります。
新島村の大沼弘一村長は、「新島村では、世界でも類のないコーガ石が産出されており、島では様々な建築物やモヤイ像、そして新島ガラスの原料として使用しています。このコーガ石は、世界でもイタリアのリパリ島と新島村の2箇所のみと言われています」と語りました。
次に、リパリ島についてご紹介します。
世界遺産に登録されたリパリ島の魅力
リパリ島は、イタリア初のユネスコ自然遺産「エオリア諸島」最大の島として知られています。リパリ島で観光したいのは、港のあるリパリ地区。町の中心には、ガリバルディ通りとヴィットリオ・エマヌエーレ通りの2本の通りがあり、お店やカフェが立ち並んでいます。お店やレストランは夜遅くまで開いており、多くの人で賑わっています。また、島の北東部にあるカンネート地区の北側に位置する軽石の採石場や、景勝地のクワットロオッキやクワットロパーニもおすすめ。
カンネート地区の軽石の採石場は、真っ白い山とエメラルドグリーンの海のコントラストが非常に美しいところです。2006年まで軽石の採石が行われており、採掘された軽石は、レンズやカメラのレンズを磨くために使用され、世界中の一流メーカーに輸出されていました。また、リパリ特産の黒曜石が採れるのも、このあたりの山となっています。
リパリ城塞地区は、紀元前5世紀のギリシャ時代に築かれました。現在の城塞は16世紀のスペイン時代に、より堅牢な城塞に造り直されたもの。この城塞地区の中に、考古学博物館、大聖堂、インマコラーラ教会、アッドロラータ教会、マドンナ・デッラ・グラッツィア教会、サンタ・カテリーナ教会、青銅器時代の住居跡、劇場などがあり、観光名所として知られています。
秋冬もおすすめ、新島で訪れたいスポット
東京都でありながら海に囲まれ、都会にはない自然に彩られた伊豆諸島にある新島村は、新島と式根島の2島で1つの村を構成しています。東京・竹芝桟橋から高速船で約2時間半、東京・調布空港から飛行機で約35分で訪れることができる東京都の島で、夏は特に多くの観光客で賑わいを見せています。
中でもおすすめなのが、新島にある一直線の海岸線に太平洋の新島ブルーな波が打ち寄せる「羽伏浦海岸」。真っ白なメインゲートから海に降りる海岸は、インスタ映えスポットとしても観光客に大人気。東京にありながらサーファーから支持を集めるサーフィンのメッカ、新島を代表する場所がこちらとなっています。
秋冬の観光アクティビティとしては「湯の浜露天温泉」がおすすめです。新島村が運営する入場料無料の温泉施設で、パルテノン神殿を彷彿とさせるモニュメントも印象的。夕焼けで染まるグラデーションの空を眺めながら浸かる入浴や、秋冬の空気が澄んだ星空を見ながらのバスタイムも最高の癒し時間に。
2024年10月21日から10月27日までは、「第35回新島国際ガラスアートフェスティバル」が開催されました。本フェスティバルは、新島村を「ガラスの島」として広め、新島ならではのガラス原料や美しい離島の環境を活かして、教育や文化、産業、観光の発展を目指すイベントです。
このフェスティバルの中で、イータリーのメニュー「アンティパストミスト新島」で使用したガラス皿の一部のサイレントオークション(=入札額を記載した用紙を購入したい作品指名で投票し、一番高い値段を記載した人が落札できるオークション方式)を開催。売上は全額寄付されます。また、その他のガラス皿は島内の飲食店で使用し、観光客や来店客に新島ガラスの魅力をより多くのシーンで訴求していくことを目指しています。
以上、南イタリア・シチリア州リパリ島と、東京都・新島を結ぶコーガ石と、両島の観光名所についてご紹介しました。ぜひ機会があったら、リパリ島と新島を訪れてみてはいかがでしょうか。