イタリア南部にある州「プーリア州」。イタリアの形は度々ブーツに例えられますが、プーリア州はちょうどその「かかと」部分に位置します。東はアドリア海、南はイオニア海に面する長い海岸線を持つ一方、内陸は高低差が比較的少なく、肥沃な大地が広がります。オリーブやトマト、中でも小麦の栽培が盛んで、イタリアの穀倉地帯にあたります。
観光地としては、16世紀~18世紀にかけて建てられたバロック建築で埋め尽くされ、その美しさから「南のフィレンツェ」とも呼ばれるレッチェや、円錐形のとんがり屋根が特徴的な住居「トゥルッリ」があるアルベルベッロ、古代より地中海交易で栄え、アッピア街道の終点でもあった港街のブリンディジなどが有名です。
1.「南のフィレンツェ」と称されるレッチェ
紀元前12世紀からの長い歴史を持ち、ローマ時代、アッピア街道の南の終点ブリンディシとトラヤヌス街道で結ばれた交通の要衝として発展したレッチェ。はちみつ色のレッチェ石で造られたバロック建築の数々は、往時の繁栄を物語っています。レッチェ石は柔らかくて加工しやすいため、彫刻を多用するバロック建築にはもってこいの石でした。
特に、レッチェ・バロックの最高傑作と謳われているのが、「サンタ・クローチェ教会」です。繊細、かつ豪華な彫刻群が織り成す神秘的な美の姿に感動を覚えます。レッチェがバロック建築の街と認識されていることがよく理解できるでしょう。
2.とんがり帽子の白い家「トゥルッリ」があるアルベルベッロ
オリーブ畑が広がる南イタリアの農村地帯で、人口1万人ほどの小さな村、アルベロベッロ。アルベロベッロは、イタリアの世界遺産として知られています。日本の世界遺産である白川郷が姉妹都市になっています。
迷路のように入り組んだ小径沿いには、「トゥルッリ」と呼ばれる円錐形のとんがり屋根が特徴となった白い家々が建ち並び、世界でも類を見ないユニークな景観。この地に移住してきた貧しい農民により16世紀半ば頃建てられたトゥルッリは、納税を逃れるため、すぐに屋根を壊して「家ではない」と主張することができるようにこのような造りにしたと言われています。
まるでおとぎの国へ迷い込んだかのような可愛らしい街なので、ぜひ訪れてみてください。
3.イタリアの代表的な港のひとつとして栄えてきたブリンディジ
アドリア海に面した港町であるブリンディジ。歴史的に貴重な美しい建物が多く残るこの町は、観光客も多く訪れる人気のスポットです。イタリアの代表的な港のひとつとして栄えてきたブリンディジは、現在も地中海地方への海路の拠点となっていて、様々な文化交流の町でもあります。
例えば、1227年に建てられた「ズヴェーヴォ城」は、ブリンディジの観光名所として知られる人気スポットです。第二次世界大戦中には、この城の中に基地を造り、一時的にブリンディジをイタリアの首都にしていた歴史があります。現在ズヴェーヴォ城は観光客にも公開されており、事前予約すればガイドツアー付きで建物内部を見学することが可能です。
実は、プーリア州はファッションの世界においても知られる存在なんです。次に、プーリア州の活気に満ちたファッションの魅力についてご紹介します。
プーリア州の「ファッション」の魅力
様々な観光名所もさることながら、プーリア州において注目したいのが「ファッション」。海の美しさ、広大な平野、そしてプーリアの街並みを象徴する白い大理石や石灰岩の建物など、その息をのむような風景や歴史的遺産だけでなく、プーリア州唯一無二の自然の豊かさから様々な影響を受けて、南イタリアらしい個性溢れる独自のファッションが生み出されています。プーリアのファッション業界は、伝統と革新、職人技と現代技術を融合させ、国内外の舞台で重要な役割を果たしています。
プーリア州は、輸出産業に多大な投資をしており、ファッション業界も国際的な市場へ進出することを強化しています。例えば、10月上旬には「第87回 フィエラ・デル・レヴァンテ国際見本市」において「インターナショナルビジネスウィーク」が開催されました。このイベントは、プーリア企業の海外市場進出を促進することを目的として行われたもの。
その中で、プーリアの優れた生産業者たちが特別なファッションショーを開催し、主役を務めました。最近のミラノ・ファッションウィークでも高く評価されており、プーリアがファッション業界で持つ潜在能力を証明しました。ショーには7つのブランドが登場し、11ブランドを展示。このイベントを通じて、プーリアが国際市場で競争する準備が整っている地域であることが示されました。
日本のバイヤーは、展示会に関して非常に満足しており、これまで知らなかった全く新しい現実を発見したとのこと。プーリアが輸出産業に多大な投資をしており、地元の多くのファッション企業が国際的に存在感を示していることを初めて知る機会となったそう。
バイヤーたちは、訪問した多くの製造企業が代々続く歴史ある企業であり、手作業による高品質な製造を維持していることに感銘を受けました。ファッションショーに参加したバイヤーたちは、ショーの演出に感動し、特に美しい草原を彷彿とさせるランウェイと、プーリアの自然の風景、ユネスコ世界遺産の映像との融合を高く評価しました。
プーリア州経済開発ディレクターのジャンナ・エリサ・ベルリンジェリオ氏は、プーリア州のファッションについて、以下のように述べています。
「ファッション業界において、プーリア州が持っている自然の魅力、地域的な伝統、こういったものと新しい技術などを組み合わせて、さらに魅力的なものに仕立てていくといったムーブメントが、今起こっています。例えば、プーリア州が世界的に有名なファッションブランドのファッションショーの場所として選ばれることが増えてきています。2021年には、「DIOR(ディオール)」がプーリア州をファッションショーの舞台としました。
プーリア州のファッションの特徴として、その多くが中小企業で、小さい工房を抱えているような家族経営のものです。職人が受け継がれてきた伝統のクリエーションデザインを上手く生かして、現在は商業的であったり大きな工業的なものに発展しています。当然クオリティは非常に高く、たとえ工業的なものにシフトチェンジしたとしても、高品質なものが保たれています。
手工業品の発展がなぜ起こったかというと、これは各企業の中で一つのイノベーションが起こったからです。この改革はどのようにして起こったかというと、やはり国であったり州であったり、そういった行政のサポートというものを大きく受ける形で、この改革に至りました」。
以上、観光名所もさることながら、プーリア州の活気に満ちたファッションについてご紹介しました。プーリア州を訪れる機会がありましたら、ぜひファッションにも注目してみてください。