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【Series】推しのイタリア②甘く美しい雪山!モンテビアンコ(池尻大橋「L’atelier MOTOZO」)

「えっ!これがモンブラン?」。真っ白な雪をいただいた山型の生クリームがマロンクリームの上で輝く神々しいケーキが、イタリア・ピエモンテ州の郷土菓子「Monte Bianco モンテビアンコ」。私たちが普段食べているモンブランとは見た目も味も違う絶品スイーツが、今回の“推し”。「イタリア菓子の伝道師」とも呼ばれるシェフを訪ねて、その美味しさの秘密に迫りました。


イタリアの名店で「パスティッチェーレ」として修行

東急田園都市線「池尻大橋」駅から歩いて2分、春には花見客でにぎわう目黒川沿いに店舗を構える「L’atelier MOTOZO ラトリエ モトゾー」は、週4日の営業日には13時の開店を待ちわびるお客様が行列をつくる人気店。洋菓子というとフレンチ系が多い日本においては、まれなイタリア洋菓子専門店です。大阪出身の藤田統三(ふじたもとぞう)さんはイタリアで修行を積み、帰国後は大阪と東京の人気店で注目を集め、独立してオーナーシェフとなったパスティッチェーレ(イタリア語のパティシエ)です。

大阪出身で軽妙な語り口の藤田統三シェフ。陽気なイタリア人とは気質が似ていて、渡伊後すぐになじんだとのこと

イタリアで価値ある経験を積みながら腕を磨き、帰国後は、大阪の「パスティチェリア・バール ピアノピアーノ」、表参道の「ソルレヴァンテ」と、伝説的な2つの店でシェフパティシエを務め、イタリアのバール文化やそれぞれの土地に根差したドルチェを通じて多くのファンを獲得。2016年、池尻大橋にオーナーシェフとして「ラトリエ モトゾー」をオープンし、イタリアの食文化を受け継ぐ本場の美味でスイーツマニアを魅了しています。

お菓子や料理に限らず、シェフが集めた蔵書が美しくディスプレイされ、イタリアにいるような気分になれる店内
イタリアらしいクラシカルな店内装飾は、すべて藤田シェフの奥様がコーディネート

ピエモンテの郷土菓子「モンテビアンコ」

イタリアとフランスの国境近くにある標高4807mの名峰。この白い山をイタリアでは「モンテビアンコ」、フランスでは「モンブラン」と呼び、どちらもケーキとして再現されています。生クリームをマロンクリームで包む「モンブラン」に対し、イタリアではマロンクリームの上に雪山のように生クリームがそびえ立っているのが特徴です。

絶品生クリームと4種の栗のクリームが調和した「モンテビアンコ」734円(税込)

藤田シェフが初めて「モンテビアンコ」に出会ったのは、イタリアで修行中に訪れたピエモンテ。レストランでの食事の締めくくり、「大皿からサーバーで取り分ける家庭的なモンブラン。真っ白な生クリームの上に、すみれの花の砂糖漬けがバーッと散りばめられて、美味しさはもちろん見た目にもびっくりしました」と語った藤田シェフ。「モンテビアンコはピエモンテの伝統的な郷土菓子。ピエモンテは栗とヘーゼルナッツの産地なんです。栗の木やナッツが実る木があって、その上に山があって雪が積もっている。なんでフランスのモンブランはマロンが上なんでしょうね?」と、シェフもモンブランの謎は知らないそうです。


革新的な生クリームを活かすためにマロンクリームが進化

藤田シェフが現在の形の「モンテビアンコ」を考案したのは、大阪の「パスティチェリア・バール ピアノピアーノ」でシェフパティシエを務めていた頃。デザインは同じでも、「ラトリエ モトゾー」の「モンテビアンコ」の味わいは、より進化しています。「この店を開く頃、お仕事をご一緒した乳業メーカーさんが新しい製法の生クリームを開発したんです」。通常、生クリームは50%程度の原料を牛乳で薄めていって、47%や40%にするのが一般的。ところが、その生クリームは初めから40%で作るので、本来の旨みがしっかりした生クリームになるそう。「この生クリームうまい!と思ったんです。その味を活かすことを考え、マロンクリームの配合をそれまでとは変えました」。現在のマロンクリームは、イタリア産2品種、スペイン産1品種、フランス産1品種という4種の栗をブレンドしたもの。イタリア産だけだと重めになってしまうマロンを軽やかにして、ふわふわで上品な生クリームとのバランスが良いマロンクリームに仕上げています。

開店から数時間、ときには予約だけで売り切れてしまうモンテビアンコ

口にする前は、「こんなに生クリームが多くていいのか?」と思っていましたが、実際に食べてみて驚いたのは、生クリームのフレッシュさ。絶妙のバランスで栗の風味を引き出していて、正直、あまり生クリームが得意ではない筆者も満足できる、軽くて爽やかな味わいでした。さらに、一番下に隠されたサクサク食感の秘密は、サブレではなくメレンゲ!全体的に重さを感じない、イタリア流のモンブランとなっています。

モンテビアンコは、4号・5号サイズのホールケーキも予約注文できます。今年のクリスマスに、白いモンブランはいかが?

一度食べたお客様が、「ぜひあの人に食べさせたい」と再度来店する「モンテビアンコ」の魔力。今後も「ラトリエ モトゾー」の“推しドルチェ”として、イタリア菓子の本流を伝えてくれることでしょう。


ピエモンテのワインと味わうのもオススメ!

“イタリア菓子の伝道師”とも呼ばれる藤田シェフから、イタリアを愛するITALIANITY読者へのメッセージは、「モンテビアンコ」をお酒と一緒に楽しんでほしいという提案。「エスプレッソにはもちろん合うけれど、ネッビオーロ種のワインと合わせるのも美味しいですよ」。地元を愛するイタリアでは、地産地消が当たり前で、ワインも土地のものを愛好するそう。ピエモンテの郷土菓子である栗のドルチェ「モンテビアンコ」を、ご当地のワインと一緒に楽しんでみてはいかがでしょう。


こちらも藤田シェフの推し。シュー生地とパイとサブレがすべて楽しめる、カスタードクリームたっぷりのシュークリーム「カーヴァロ」540円(税込)
イタリアで幸運のシンボルとされるてんとう虫。「ラトリエ モトゾー」のドルチェが幸せを運びます

L’atelier MOTOZO

住所:東京都目黒区東山3-1-4 ニューリバー東山 1F

営業時間 : 13:00〜18:00(商品がなくなり次第閉店)
定休日:月曜・火曜・金曜