FILM

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イタリアのティーンエイジャーの姿をリアルに描いた映画『最初で最後のキス』

ポップな青春ドラマでは終わらない衝撃作

ヨーロッパ各国の映画祭でいくつもの観客賞を受賞、若者を中心に多くの人に支持された映画『最初で最後のキス』。現代イタリアの高校生たちのリアルな姿を描いた作品で、最初はポップな青春映画だと思って観ていると、テーマはとてもシリアス。観る人の心に深く突き刺さる衝撃作となっています。

校舎で歌い踊るミュージカルシーン

個性的な服装のロレンツォ

ドラマの舞台は、イタリア北部の町ウーディネ。心やさしい里親に引き取られ、トリノからこの町の高校に転入したロレンツォは、個性的な服装と自由な言動で、たちまち学校で浮いた存在に。が、同じようにクラスで「はみだし者」扱いされている女の子ブルー、バスケ部のアントニオと意気投合し、3人で友情を育んでいく。仲間との楽しい時間を過ごしていたはずが、ロレンツォのある行動がきっかけで少しずつ歯車が狂い始めていきます。

レディー・ガガに憧れ、スターを夢見るロレンツォが(妄想を炸裂させて)校舎で歌い踊るミュージカルシーンは、アメリカの人気TVドラマ『glee/グリー』のようで、この映画のブライトサイドです。

おしゃれを楽しみ、スマホを手放さず、恋人や友人の言葉に一喜一憂するティーンエイジャーの姿は、日本と変わらない、いまどきの若者らしさを感じます。そしてイジメやSNSを使った中傷も、どこの国でも変わらない光景なんだなと感じさせられます。とはいえ、現代イタリアのリアルな若者の姿を描いた映画というのは意外に、日本で観られる機会が少ないので、そういう意味ではとても新鮮。

ロレンツォ

ブルー

現実の事件から着想した映画

監督は『ミラノ、愛に生きる』『あしたのパスタはアルデンテ』などの脚本を務め、ストーリーテリングには定評のあるイヴァン・コトロネーオ。アメリカで実際に起きたティーンエイジャーの殺人事件に衝撃を受けて小説を執筆、その小説をみずから映画化。2016年イタリア・ゴールデングローブ賞最優秀脚本賞を受賞しています。

劇中、悩める主人公たちを鼓舞するようにレディー・ガガの「ボーン・ディス・ウェイ」が流れます。どんなセクシャリティでもあなたは正しい。生まれたままで美しい。神様があなたを完璧につくったんだから――。そんなメッセージに励まされるのは、ドラマ内の若者だけじゃないはず。

ロレンツォ、ブルー、アントニオ

「人と違っていること」が原因で差別されたりイジメの被害にあったり、孤独を感じているティーンエイジャーのために、この映画をつくったと、イヴァン・コトロネーロ監督は言います。

無知と恐怖によって繰り返される悲劇。しかし、知恵と勇気をもって、危機をのりこえて生き延びるんだ、とこの映画は悩める若者たちに呼びかけます。悲劇的なラストではなく希望につなげるエンディングに救われます。

ロレンツォを演じるリマウ・グリッロ・リッツベルガー

ロレンツォを演じるリマウ・グリッロ・リッツベルガーは、今作が映画初主演。インドネシア人の父とオーストリア人の母をもち、3歳からイタリア・トリエステで育ち、現在はローマ大学哲学科で学ぶ。6月2日の公開に合わせて来日、都内劇場で舞台あいさつも予定。


映画『最初で最後のキス』
原題:Un Bacio
公開日:2018年6月2日(土)より新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次ロードショー
監督・原案・脚本:イヴァン・コトロネーオ 
出演:リマウ・グリッロ・リッツベルガー/ヴァレンティーナ・ロマーニ/レオナルド・パッザッリ/デニス・ファゾーロ/アレッサンドロ・スペルドゥーティほか
配給:ミモザフィルムズ/日本イタリア映画社
©2016 Indigo Film – Titanus
公式サイト onekiss-movie.jp