40歳にして世界三大映画祭すべてで賞を受賞。イタリアを代表する映画監督、ナンニ・モレッティの最新作『チネチッタで会いましょう』が、2024年11月22日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開されます。(本記事の最後にプレゼント情報があります)
ナンニ・モレッティ監督50年のキャリアを集大成するのが本作品は、時代の変化についていけず、気づいたらはみ出してしまった映画監督が、失意の後に大切なことに気づくというヒューマンドラマ。フェリーニやキェシロフスキ、スコセッシなど映画へのオマージュを交えながら、ところどころに自身の過去作品を引用して、映画作りと私生活のゴタゴタを軽やかに描いています。
ナンニ・モレッティは、カンヌ、ヴェネチア、ベルリン3大映画祭での受賞歴があり、カンヌ国際映画祭コンペティション部門に8作品が連続して選出されるなど、イタリア映画界を代表する巨匠。
日本で2012年に公開された『ローマ法王の休日』では、新法王がプレッシャーに耐えかねてローマの街をさまよう姿をユーモアたっぷりに、しかし全体としてはシリアスなトーンで描き出しました。
本作でもユーモアを織り交ぜたシリアスなストーリーテリングは健在。モレッティ自身が、時代に取り残されてしまった映画監督を演じています。
あらすじ
5年に1度新作を撮り続けてきた映画監督ジョヴァンニ。傍にはプロデューサーでもある妻がいつもいてくれた。頭の中は新作のアイディアでいっぱいだ。完璧に見えた彼の人生。ところが自分は世間からも家族の気持ちからもズレていたことに、容赦なく気付かされる出来事に見舞われる。妻には突然別れを切り出され、フランス人のプロデューサーは詐欺師とわかり、映画製作は中断される。しまいには妻のプロデュースする映画にも難癖をつけ、撮影を一晩とめてしまう。Netflixを頼ってはみたものの脚本にダメ出しされる。窮地に陥った彼が失意の中で見つけた大切なものとは?
他人事とは思えない?人生模様
映画監督として華々しいキャリアを築き、順風満帆な人生を歩んでいたかに思えたジョヴァンニ。しかし、気づいたら時代についていけなくなっていて、いつの間にかパートナーの心も離れていて……という構図は、どうにも他人事と思えません。身近にもそんな人が一人二人いそうだし、もしかしたら、自分もそうなりつつあるかも。
象徴的なのは、予告編にも登場するNetflixでのエピソード。エンターテインメント業界に携わるクリエイターにとって、「ヒット要素」と「自分が作りたいもの」の狭間で葛藤するのはよくある話です。ありったけの美学を詰め込んだ企画を持ち込んで、「これじゃちょっと……」と断られた経験を持たないクリエイターは、ほぼいないのでは(たぶん)。
他人の現場に乗り込んで熱弁を振るって撮影を一昼夜止めてみたり、決定的な別れを告げられるまで妻の気持ちに気づかなかったりと、「しょうがないなあ」と思う部分もありつつも、共感してしまう部分も多々あってなんだかんだ憎めないキャラクターです。
ジョヴァンニを取り巻く人々も一筋縄ではいきません。主演女優は言うことを聞かないし、娘は「本当にその人を……?」という恋人を連れてくるし、挙げ句の果てには肝心のプロデューサーが詐欺を働いていたことが発覚。一癖も二癖もある人々がユーモラスな人間模様で楽しませてくれます。
物語と交互に展開される劇中劇も見どころの一つ。1956年のソ連によるハンガリー侵攻を背景に、イタリア共産党員の活動を描く劇中劇では、時代の変化に取り残されていく主人公の苦悩が描かれます。最終的に主人公は自ら命を絶つという結末が用意されているのですが、ジョヴァンニ自身の変化が脚本に変化を与えていきます。果たして、映画の行末は?
原題の『IL SOL DELL’AVVENIRE』は「未来の太陽」の意。そのタイトルの通り、物語の最後には爽やかで明るい気持ちになれます。
ちなみに、邦題の「チネチッタ」とは、ローマにある有名な映画撮影所で、ヴィスコンティの『ベリッシマ』、フェリーニの『甘い生活』、ウィリアム・ワイラーの『ベン・ハー』『ローマの休日』など数々の名作が生まれた場所。モレッティ作品の常連マルゲリータ・ブイ、俳優であり監督のマチュー・アマルリックら名優の演技とともに、イタリアの街並みも楽しめる作品です。
監督:ナンニ・モレッティ
脚本:フランチェスカ・マルチャーノ、ナンニ・モレッティ、フェデリカ・ポントレモーリ、ヴァリア・サンテッラ
音楽:フランコ・ピエルサンティ
撮影:ミケーレ・ダッタナージオ
出演:ナンニ・モレッティ、マルゲリータ・ブイ、シルヴィオ・オルランド、バルボラ・ボブローヴァ、マチュー・アマルリック
2023 年/イタリア・フランス/原題:Il sol dell’avvenire/96 分/ヴィスタサイズ/日本語字幕:関口英子 後援:イタリア大使館/特別協力:イタリア文化会館/配給:チャイルド・フィルム
https://child-film.com/cinecitta
© 2023 Sacher Film–Fandango–Le Pacte–France 3Cinéma
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