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イタリアってどうなってる?再びロックダウン中のフィレンツェから最新リポート

日本でも連日新規コロナ感染者数の増加が報道されていますが、イタリアでは10月に入ってから感染者数が急増し、11月25日現在においてイタリア全土における感染者数は146万人、新規感染者数は2万3千人を超えています。同日における日本の新規感染者数1944人と比べると、イタリアの増加具合が想像できるかと思います。

再び増えたと伝えると、マスク着用が減ったとか、消毒ジェル&手洗いの徹底が薄れたとか、他人との距離を開けなくなったのかなどと思われるかもしれませんが、これらの習慣は前回のロックダウン以降ずっと続いていますし、マスク着用は義務付けられ、着用していないと罰金となるため、日本よりも厳しく規制されています。これだけ多いのは、前回に比べてほぼ10倍ほど多くの人が検査を行なっているという背景があり、1日あたりの死亡者数については前回のピーク時に近い状態です。

前回のロックダウンとの違いは「ゾーン別の措置」

イタリアではコロナ感染者の再拡大のため、11月6日から2度目のロックダウンに入りました。前回3月から5月にかけて行われた最初のロックダウンと今回の大きな違いはゾーン別に行われる点にあります。前回はイタリア全土において一斉に同じ規制レベルのロックダウンが行われましたが、今回は規制レベルをレッド、オレンジ、イエローと3段階に分け、特に感染拡大が深刻な州などを一番厳しいレッドゾーン、感染者が少ない州などを一番ゆるいイエローゾーンに指定して規制しています。

出典:在イタリア日本国大使館、11月24日時点のゾーン分け

具体的にレベルごとにどれほどの違いがあるかは以下の通り。レッドゾーンについては、前回3〜5月のロックダウンとほぼ同レベルの厳しい規制になっています。

<レッドゾーン>

・24時間外出禁止(緊急性のある用事や仕事など必要性のある状況を除く)
・在住地域内も必要性のある用事以外の移動禁止
・生活必需品の販売活動を除き、小売り営業の禁止
・飲食サービス業の禁止。持ち帰りサービスのみ22時までOK
・幼児教育、小学校、中学1年生を除く学校・教育活動はオンライン教育のみ。

<オレンジゾーン>

・22時~5時は外出禁止(緊急性のある用事や仕事など必要性のある状況を除く)
・州・市をまたぐ移動の禁止(緊急性のある用事や仕事など必要性のある状況を除く)
・土・日・祝日・祝日の前日には、ショッピングモール内などのショップは閉鎖
・飲食サービス業の禁止。持ち帰りサービスのみ22時までOK
・高等学校はオンライン教育のみ

<イエローゾーン>

・22時~5時は外出禁止(緊急性のある用事や仕事など必要性のある状況を除く)
・土・日・祝日・祝日の前日には、ショッピングモール内などのショップは閉鎖
・飲食サービス業は5時~18時のみ営業可能。持ち帰りサービスは22時までOK
・高等学校はオンライン教育のみ

<全ゾーン共通>

ジム、プール、美術館など文化施設、劇場、映画館は閉鎖。クリーニング店、美容・理容店は営業可能。

イエローでスタートしたものの、わずか10日でレッドに指定されたフィレンツェ

さて、ここからは私が住んでいるフィレンツェを例に今回のロックダウンは実際に経験してどんな感じの暮らしなのかご紹介していきます。

最初にゾーン別規制のロックダウンが始まったのは11月6日。前回のロックダウン以降、常に最も多い感染者数を抱えるミラノを州都とするロンバルディア州など4州がレッドゾーンに指定されましたが、フィレンツェを州都とするトスカーナ州はイエローゾーンからのスタートでした。

イエローゾーンの規制は一番ゆるいものではありますが、大きく生活が変わるのはレストランやバーが18時で閉店になるという点。イタリア人のディナーというのは日本人からすると遅い20時〜21時半開始のため、18時閉店というのは夕食をレストランでとることができないということを意味します。イタリア人の大好きなアペリティーボ(アペリティフ)も18時〜20時が一般的なのでこれも不可。そして映画館や劇場、スポーツジムなども閉鎖になるため、つまりは夜は出歩いても20時頃まで開いているショップでの買い物程度しかすることがなくなる生活に。イエローゾーンの外出禁止は22時から翌朝の5時までですが、18時頃までには街から人影が消えました。

とはいえイエローゾーンの間は、5時〜22時は自由に出歩くこともでき、レストランでランチをとることも可能で気軽なものでしたが、わずか5日後の11日からオレンジゾーンへ突入。

オレンジゾーンとイエローゾーンの違いは移動範囲の制限であり、自由にフィレンツェ市から出ることができなくなりました。フィレンツェは小さな市なので行動範囲が極端に狭くなります。レストラン内やバールでの飲食もできなくなりました。

それでもまだオレンジまでは日中は自由に出歩けたわけですが、オレンジはわずか4日しか続かず15日からはレッドに指定され、外出の自由が再び奪われました。スーパーへの食材の買い出しですら外出自己宣誓書の携帯が義務付けられるようになり、実質上、前回の3〜5月のロックダウンとほぼ同じような厳しい制限のある生活となっています。

一番厳しいレッドゾーンでも前回のロックダウンより雰囲気は穏やか

11月25日時点で11日目を迎えているレッドゾーンのロックダウンですが、一度ロックダウンを経験すると慣れたものなのか、今回のロックダウンは市民も落ち着いているように感じます。

最初のロックダウンでは警察の取締りが非常にシビアで、巡回する警察官を街のあちこちで目にし、歩いている市民に外出自己宣誓書の提示を求めるシーンをよく目にしましたが、今回はそんなピリピリした緊張感もなく穏やかな雰囲気です。前回に比べて移動距離規制もなく、最寄りではなく好きなスーパーなどへも出かけられ少しは自由度も高く感じます。

そもそも前回のロックダウン時期の3〜5月は好天続きで外出したくなるような陽気でしたが、今回はサマータイムも終わって夕方5時には既に暗くなり、最低気温が0度前後となる日もあるほど寒い日が続いているため、市民たちの外出したくなる欲求も減少傾向にあります。

ところで、レッドゾーンでは風変わりな光景も見かけるようになりました。洋服店やデパートなどで、販売が許可されている商品以外のコーナーは、全てビニールテープで囲われ立入禁止にされた状態にして営業を続けているショップが増えました。下着類や寝具、化粧品類は日用品として販売が認められるため、それのみ販売しているのです。そのため、前回のロックダウンよりは営業しているショップは多いのですが、生活必需品の判断は人それぞれであり、少々いびつなイメージを受けます。

また市民たちからは「美容院や学校はOKなのに、飲食店や映画館や劇場はNGなど、その差はなんなのか」などとと行った不満の声もあがっています。

経済ダメージへの不満の声があちこちで噴出したロックダウン前のフィレンツェ

バカンスが終わって秋になり、コロナ感染者が再び増加し始めると、再びロックダウンに入るといった噂が流れるようになり、フィレンツェでもロックダウン反対の様々なデモが起きました。

撮影Controradio Firenze

ロックダウン開始直前の10月28日には、フィレンツェを含む18の都市で飲食店関係者らが政府に対してデモを行いました。フィレンツェではドゥオモにレストラン経営者やシェフらが集まり「コロナ禍での営業のために、政府の指示の通りに我々は多額の資金を使って対策をとった。それにも関わらず再び営業禁止をするのでは、なんのための対策だったのか。営業が立ち行かなくなる。」などと主張を訴えました。

撮影Controradio Firenze

また、10月30日には政府のコロナ対策に反対するデモがフィレンツェの中心部で起こり、200人ほどのデモ隊が武装した警察官と衝突を繰り広げました。通りに火炎瓶が投げ込まれるなど、今回のコロナ禍のフィレンツェで一番緊迫した一夜となりました。

撮影Controradio Firenze

8月24日には、サンタクローチェ教会の近くのレストラン経営者の44歳男性がコロナ禍の経営不安から自殺をしたことがニュースになりましたが、そのレストランの前を通った時、閉鎖されたレストランの入り口に白バラが数本手向けられているのを見て、コロナ禍の被害を身近に感じました。

前回のロックダウンでは隣町の知り合いが一人感染したくらいでしたが、今回は身近な友人や知り合いが何人もコロナに感染しており、前回以上にコロナ感染の猛威を感じるようになっています。

午後5時頃撮影、誰も歩いていないポンテベッキオ

今のところフィレンツェのあるトスカーナ州のレッドゾーンは12月まで続く見込みですが、状況次第で変更になるためどの程度続くかはまだ不明です。